リアルVRMMO世界で広げられる熱血英雄譚! 王道な感じがとても良いです。
リアルさが段違いの夢の仮想ゲーム「Infinite Dendrogram」
西暦2043年、世界各国同時に発売されたVRMMO「Infinite Dendrogram」。
とてもゲームとは思えないと評判のそれを、椋鳥玲二 (プレイヤー名:レイ・スターリング)が手にとってスタートするところから始まります。
リアルなVRMMOかーとか最初のほうはチュートリアルっぽいなーとか思って読んでいましたが、実際にゲームがスタートするとリアルってほんとにリアルかよみたいな現実に遭遇したり、レイの≪エンブリオ≫であるネメシスの獲得した能力がジャイアントキリング特化すぎてなるほど無限の可能性…みたいになったり、レイのゲームだけどゲームを超えた真剣さに熱さを感じたりで、気がつくと既刊4巻まで読み終わってました。面白い。
やはりレイくんが困難に向かっていくところが一番熱いポイントです。VRMMOもので難しい「これはどれだけリアルでもゲームであるから現実には影響しない(だからプレイヤーはゲームとして楽しんでいる)」と「登場人物が真剣にやっていないと面白くない」のバランスがレイくん割と後者に全振り。それが、「ゲームらしからぬリアルさのシステム」や「NPCとはとても思えない思考をするNPC」たちと上手くマッチして、あたかもVRMMOを通じて異世界にアクセスしているかのような錯覚まで感じるところです。
後から思い返すと都合良くスキル覚えていったなあとか、最初から集まる人達が凄い人達ばかりだとか思うところもありますけど、読んでいる最中は展開のアツさに押されているし、それなりに納得できる条件などでもあったりしてあからさまなチート感を感じなかったのも上手いところかも。
無限の可能性と自由さを誇るゲームシステム
また特徴的なのがこのゲームシステム。「現実と遜色ないほどリアル」や「現実の1日がゲームの3日」、「人間と間違えるような思考性能のAI (NPC)」あたりなどラノベ的にはそれなりに普通なのですが、「イベントはプレイヤーの攻略可能不可能に関わらず発生し、時間経過で進行する」「死んだティアン (NPC)は復活しない」そして「王や英雄など重要人物NPCも展開によって容赦なく死ぬ」までくると「そっちの方にリアルか…」みたいな感じになります。
NPCが死んでしまうものもそう珍しくないかもしれませんが、そこにリアルさを感じるのは「イベントの発生は条件が満たされただけで、プレイヤー(がクリアできるかどうか)に配慮されているわけではない」「状況次第で、誰もが平等に」あたりが大きいかなと思います。つまりこれが現実。現実は待ってくれない…
RPGの設定なんかでありがちな「ずっと前から山に棲みついて悪さをする山賊」みたいなのとかでもほんとに棲みついてるやつだったりしますし、スタート地点のアルター王国が窮地に陥っているのも、ある意味ティアンとプレイヤーたちの選択した結果であったりしますし。
そんな世界ですから特徴的なデスペナルティー「死んだら24時間ログインできない」が生まれるわけで。このゲームで1日(ゲーム内時間で3日)ログインできなくなるってのは、状況によっては大惨事ですね…
一方で、ゲームですからゲームらしさもあります。アイテム収納やクラスのパラメータ、HPやMP、SPなどなど。マスター(プレイヤーはゲーム内でこう呼ばれる)同士の会話なんかは、ここがゲーム世界だと思い出させてくれるものです。
ゲームシステムとして最大の特徴はプレイヤーの脳波データに合わせてオンリーワンの進化を遂げるパートナー、「エンブリオ」。
マスターの成長に合わせて自らも能力、形態を変えていくこのサポートシステムがまた多種多様…と言うより同一のものは存在しないくらいに自由度が高い。
このエンブリオを所有していることと、死んでも復活できることがティアンとマスターの違いになります。逆に言えばそれ以外はティアンもマスターも違わず、ティアンでもゲーム内でユニークな≪超級≫クラスを獲得していたりします。それもまた自由。
システムの自由さでいったら現実の高額知識と現地の魔術知識でロボット兵器が開発できるとかオリジナルモンスターが製造できるとかまであるのでだいぶやべー世界だなって思いますね。またモンスターとかも勝手に進化していったり新種誕生してたりして、もうこれ絶対制御してないよなって。
こういう無茶な自由度のゲームを見るとデバッグ無理でしょ…っていつも戦慄します。(職業柄)
この世界で生きている、マスターとティアン、エンブリオたち
この、割と普通に異世界っぽいところとゲームらしさが出ているところが混ざっているあたりにも面白さがありますが、そこで動いているキャラクターが気になるのもまたライトノベル。
熱血気質のレイくんに、そのエンブリオで人型AIのネメシス (武器になる強気ロリ)。基本的にはこの二人視点でデンドロの世界が描かれていきます。
集まってくるのも一癖ある美少年ルーク(とそのエンブリオ、淫魔のバビ)とか謎の記者マリーさんとかガトリングぶっ放すクマの兄貴とか多種多様。方やティアンはほんと普通にファンタジーしてて…聖騎士リリアーナさんとか見てると(ある意味)安心します。
1巻、2巻はレイくんのエピソード中心だけど、3巻あたりから≪超級≫職の本格参戦、そしてそれぞれの戦いに繋がっていくところもまた熱いです。個人的には外伝から繋がってきているマリーさんとエリちゃんが良い。
4巻では最高に熱いところで次巻を待てになってしまっているので次がとても楽しみです。
「基本的にゲームなんだけどゲームらしくない」なかで、レイくんが特に「ゲームとは思えないと感じている」ところのバランス感が、そのまま異世界とかゲームプレイ感を出しているVRMMOものとは違った魅力になっているかもしれません。
ルーキーが駆け上がっていく英雄譚として、また一つの世界が英雄達によって動いていく物語として、可能性ある面白いラノベです。
また今井神先生によるコミカライズもありまして、無料で公開されているので気になった方はこちらも是非。
熱いファンタジー漫画になってます。コテコテ装備の能力バトルとか十八番ですものなこの方。