そしてその結末は…結末は…
王女と舞官と情報屋とファンタジー世界のおとぎ話
「王歌」という奇跡を歌う王女アルナリス、その護衛のために剣の腕を磨いてきた護舞官ユウファ、ある目的のものを求めて旅をする情報屋の少女イルナ。
中世風の世界である「赤燕の国」を舞台に進行する事件と陰謀のために追われることになったアルナたちの逃避行とその結末が、御伽話的な雰囲気のあるファンタジーで描き出されていてすごくいい。
燕をモチーフにした独特の剣技とか、いわゆる魔法…とも違うような「言血」というものとか、ある理由で言葉を自ら封じているアルナの特異性だとか、しゃべる赤い燕だとかでかい犬だとかネコミミだとかがさらっと出てくるのです。
そしてそれらがこの世界において綺麗にまとまっている感じ。うん。ファンタジーである。
言血と血統
その中でも際だって特徴的だったのが「言血」というもの。
これは個人的解釈が入るけど、「魂のエネルギー」というものなのかなあ。「気」とか「オーラ」とかいうものに近いのかもしれない。
それを通わせることで動きがよくなったり、思いや記憶が混ざり合ったりして。人だけではなく森や獣にもそれがあり、それでみんな生きているみたいな感じ。
また、この世界の人たちは何らかの獣の血を遺伝しているらしく、その特徴がどこかに現れていたり、それゆえの力を持っているみたいで。
「蛇」の血を引くものは力持ちで、「猫」の血が混ざっていると記憶力に優れ、頭の回転が速い、など。これもさらっとそういうものかーという感じで見ていました。
「言血」についてはだいたいどんな場面でも出てきていて、その扱われ方にだいぶ万能感があります。このあたりも独特の雰囲気作りにプラスになっていますね。
身分違いの幼馴染みの逃避行
…というふうにまとめると駆け落ちみたいだけどそういうわけではない…二人旅じゃないし。
でもこの旅の間のアルナの楽しそうなところとかはほんといいですね。むしろそのままずっと旅をしていてもよかったのに。
護衛の剣士が朴念仁なのはもうお約束か…どうみても相思相愛だろって感じしかしないし最後そしてこれはせつなさ炸裂して乙女力高い…
という、なんとも良い雰囲気で、綺麗な物語でした。
そして実のところ最初にこの話を読み進めていたとき、本のカバーとかにあるあらすじと比べてちょっと違和感を感じてたんですよね。それが読み終わって、感想をしたためているとよくわかった。なるほど間違ってはいない…いないが真実全ては語れない…