上下巻です。
上巻では新ヒロインのフレデリカ、下巻では安定のレーナ。
これは明確に1巻の続きなのでまだ未読の方はまず1巻からお読み下さい。
※ここから先にはシリーズ前巻までについてのネタバレがあります。続き物なのでご容赦下さい。
1巻ラストに繋がるシンたちの戦い
1巻から続く物語であり、またその最後までの期間を埋めるエピソードとなります。ダイジェストでお送りされていたあたりですね。
共和国から連邦へ脱出した(してしまった)シンたちスピアヘッドの面々。それを見送ったレーナ。そこから今巻は始まります。
あのラストは文句なしに素晴らしく、それはあの構成だったからこそでもあるので、別視点とはいえそこを埋めてしまうのは蛇足ではないかとも思いましたが、下巻を最後まで読んでなるほど、これは先に進めるためには必要なんだなと感じました。
消耗品だったものたちの誇りとあきらめ
捨て駒になることだけを求められていたエイティシックスの面々がまっとうな人権意識のある人々に保護され、それでもまたレギオンとの死闘に舞い戻ってしまう(それだけの力がある)ところは客観的に見たら悲劇なのでしょうけど、それしか知らないのならばそうすることが自然であると殴りかかっていくところがまた周囲の常識から浮いてしまってますますなじめない哀しみを生む。
連邦も共和国のような有様では無いにせよ、レギオン相手に戦争をしているわけで被害無しではいられない。そんな中で経験豊富かつ異邦人のエイティシックスが都合良く使えてしまうことと、保護したはずの少年兵をまた戦場に送り込むことのジレンマで揺れているところはあって、お話的にはバトルに入らないと盛り上がらないので結局戦場に送られるわけですが(共和国と比べて)葛藤してるだけマシかなって思えるのたぶん僕の基準がずれてますね。でも前線からの脱走率を下げるために少女をマスコットとして部隊に送り込むみたいなことをやってるんだよなあ (愛着を抱かせ見捨てられないようにするのが狙い)
進化するレギオンと人間の異能
ストーリーのメインとしては、新加入したフレデリカとその近衛兵士であり、レギオンに吸収されたキリヤの戦いでもあります。
フレデリカはシンとはまた違った異能を持っていて、それによって舞台の助けとなります。この異能は血統で発現していくもののようなので、今後シリーズが続いていくとまた別の異能が出てきたりして重要な部分になりそう。
レギオンもまた進化しているのか、描写が省かれていたのかはわからないですが、明確な知性が見て取れるあたりが恐ろしいものになっていました。ただの生体パーツとして脳を組み込んでいて、命令や判断はただ「処理」されているだけ、生体パーツの名残で亡霊のような悲鳴を上げているだけのものかと思っていたのですが、命令をやりとりして、そこに生前の意思が反映されているかのような会話になっているとこれはもうパーツではない何かになっているのではと感じます。
今も機械学習などでAIに対するいろいろが進んでいますが、その知性、感情、判断の部分を生体パーツが埋めてしまったかのように思うと、 機械生命体と呼べるものに足を掛けているのではとすら思えます。すでにそうなのかもしれません。
しかもそれが、元になった人間の意思や人格を残しつつ、別のものとして襲いかかってくるところはホラーでしかない。
ようやくラストに辿り着いたシンとレーナですが、レギオンとの戦いはむしろここからでもあって、またヘビーな戦いの日々に戻るのか今度こそライトなところになるのか…後者はどうかな…でもところどころラブでコメってるような兆しもあるからきっとそういう平和なパートがあってもいい。ライトなノベルなのに殺戮マシーン相手にガチ戦争しすぎである。がんばれクレナちゃん。