俺の名は、業良犬介。世界一のブレインハッカーだ。
このシビれる出だしからお察しの通り
最高にKOOLで取り返しのつかないサイバーでパンクなやつだ。
業良大介の物語はクソッタレな吾妻中学校二年の教室から始まる。
スクールカーストが支配する世界で、上位グループ「吾妻ホワイツ」に(パシリ要因として)所属を許されている大介と、同クラスながら完全最下層の小澤。
大介も吾妻ホワイツのグループメンバーではあるもののマインドは小澤のほうが近いやつで、学校以外ではよくつるんでいる悪友というやつだ。
その悪友である小澤が、スクールカースト上位の奴らにひどい目に遭わされ。もう黙っちゃいられないと全力でこじらせた結果が学校のいじめどうこうというレベルではない足の踏み外し方をする羽目になるところまでめちゃくちゃハードボイルド。固ゆで卵ってやつ。
ガチのハッカーはマジでヤバイ
そもそもこの世界の話をしよう。脳に埋め込まれた生体チップで全てが管理されている管理社会で、大介だちも当然ながら常に監視されながら生きている。
そんな世界でも所謂いじめは発生する。そうなってしまうのは人の業なのか、それとも上辺だけの監視がさらなる歪みを作ってしまったのか…そしてこの年代が後先考えないのも全人類共通で、追い詰められていじめっ子の脳をハッキングするというガチでヤバイやつに手を出していくのもまた定め。
ヤケと勢いだけの行動にでた大介たちが接触してしまったのは、一億の懸賞金が掛かっている本物のハッカー、キャプテン・スカンチ。
大介たちも、ガキが喧嘩で「ぶっ殺したらぁ!」と刃物を抜くような危なさを秘めてたけれどスカンチはマジで関わってはいけない大人の狂気と冷酷さを兼ねていて、この中二が足を踏み入れてしまったら最後感がまたパンクなんだ。
いや、どっとも大概っていうか冷静に考えるとだいぶヤバイし実際ヤバイんだけど。大介や小澤はまだ可愛げというかガキの戯言感があるんだがスカンチはヤバイ。
またこうしてみると、「復讐」という時点でナード的というか、その方法も相手の不意を突くようなやり方だとか、勢いはあるんだけど遠隔攻撃オンリーみたいなところ、それでもってその方法が飛び抜けて高度でヤバイというところ微妙に情けないのかすごいのかよくわからなくて嫌いじゃない。
大介も結局、ツールを使っていくのがメインのスクリプトキディ的な感じもあって実に中二力高い。だから大人にいいようにやられる。
唐突に現れる不思議ちゃん
本作の癒やしです。ピンク髪ショートの不思議ねこ、加納蓮。あ"あ"~
殺伐としたハードボイルド()な世界で輝く一輪の猫…だがしかしカラテマスターでもある!
大介のハードボイルド()な一人称で殺伐としている中で、彼女が出てくると不思議と和みます。
扱っている内容が近未来ハッキングなので、その手の用語、造語も割と出てくる、加えて大介がやさぐれ中二男子なものだからこう大変なことになっている本文なんです。救いといっていいかもしれない。
でも、いろいろと分かって協力してるんだろうかって心配になるところもあるんだけど、恋は盲目というやつなのかね…
あと女子キャラ的には無口クールな王子君。中華系の美人さんでちょっとズレたところもあっていろいろ謎めいているところもまた良い。
スクールカースト上位のあこがれ美月ちゃんは、まあ…なんていうか…やはりカースト上位は滅ぼされなければならない。
脳へのハッキングがゲームをイメージしていたりするところが逆にラノベっぽい(逆にってなんだ みたいなところもあったりした、あふれる中二魂がまぶしい勢いのある一冊でした。カースト上位滅ぶべし。