察する人はこの著者名で察するような高校生が世界革命狙っていくぜシリーズ。
軽妙な掛け合いとぶっ飛んでるんだか地に足付いてるんだかわからなくなるような展開が面白い…面白いと思うんだけどどうだろう?
※ここから先にはネタバレがあります。…いや、バレなのかどうかもアレなんだけどでも、うーむ…
この作品、ラノベとして規格外な上に初見が一番おもしろいと思うので政治経済メディアネタの異色ラノベに惹かれる人はまず買ってしまうのおすすめです。いやほんと。
世界統一を目指す女子高生参上!
むしろ惨状である。
開幕からおもいっきりギアが全開なアツい生徒会長立候補者一條明日菜。理不尽な現代社会への怒りを胸にこの世界の革命を訴えはじめるわけです。バカヤロー選挙というやつです。
…高校の生徒会役員選挙です。
まあそれで、おっと生徒会ものかな? って思っていたらこれがまたそんな予想をまるっきり無視して謎の部活の勧誘が始まってしまうわけで。その活動内容も展開も、フィクション感はあるけど現実路線というかそれは…みたいなところまであるものでむしろ先が読めない。
…まあそれはそれとして。
その明日菜の演説を聴いている生徒たちはまあ、どん引きなわけで、ただの男子生徒である霧島隼兵もまた同様に冷めた感じでそれを流しつつ普通に帰宅するところを明日菜に掴まり…巻き込まれてなんだかんだと手伝う羽目に。
そう、手伝う。
マジで始まってしまうわけですよこの地球統一革命が…
政治! 経済! 女子高生!
それでラノベ的にどういう手段でそれを獲りに行くかって話になると現実的かと言われると困るけど、全くの絵空事かと言われると可能性あるのでは…という微妙なライン。それがどう地球統一革命に繋がっていくというのかは見てのお楽しみ。
「世論はメディアに牛耳られてるんじゃあああっ!」っていうのが根底にあって、それを踏まえて世論を、世界を正すにはどうするのかみたいなところの筋道を立てていくわけです。
方法は、言ってしまえばだいぶ突拍子もないけど、確かに荒唐無稽とまでは…やってみた結果を見てみたいと思うところがあったりしてすごく興味深い。実際現実で誰かやったらどうなるのこれというところまである。
このあたりの発想と行動力は無茶でもあり、ある意味高校生らしいのかもしれないところでもあり、今となってはうらやましい勢いを感じるところは確かにあります。この時代だから許されることは確かにある。
…でまあ、この時点でもファミ通文庫…? って顔になる(褒め言葉 わけですがここで語られているネタも学生デモ動員5000人という誇張をする新聞報道を斬る! みたいなふうでいろいろ察せられるわけです。
そのくらいならちょっと時事ネタ的な感じでわからなくもないと思ってたら押し紙問題とか語り始めて完全にターゲットは新聞社。ネトウヨ的な流れではなく、明確に新聞社の問題点を叩きにいくスタイルがまさかのファミ通文庫。
なんでしょうね、展開が変に現実的なだけに、普通のラノベを読んでるのとは違うドキドキハラハラ感がこう。
かといって、これがサラリーマン主人公の一般小説だったら、ここまで次に何をやらかすかわからないドキドキ感はなかった気がするんですよね。やはり女子高生だから許されることがある。
あるんですが、ほんと挿絵もかわいすぎて最高なんですが、中身これインテリ姐さんっていうかほんと大丈夫なのファミ通文庫!
個性豊かすぎるメンバーたち
いや最初のバカヤロー選挙でおわかりのように一條明日菜はだいぶ口が悪い。口が悪いっていうかべらんめぇって感じでどこの姐さんなのかというところまである。その口調で政治とメディアを大人顔負けの論調で語るのである。
まあそうは言ってもラノベのヒロインなんだからかわいいものでしょ? って思ったあなたはお楽しみに。確実に面食らうから。
そして乙女である。
この台詞周りで完全に忘れそうになるけどまだ高校生の女の子でもあるんですよね。ほんと忘れそうになる勢いだけど。
ただ色恋よりユウジョウ! みたいな熱いタイプでもあるので乙女というより浪漫かもしれないところまであるから……なんだろうねほんと。
そんな彼女の幼なじみにして学校一の才媛と名高い天宮柑奈さん。明日菜と同レベルで政治経済を語る保守派の論客であり実は一癖あるような子だったりするけど周りがひどくて相対的にいちばん普通に見えてしまう哀しみを背負っている。強く生きて欲しい。
他に途中から合流する元(売れない)アイドルの水樹さんとか隼兵の妹の雲雀chang(ネットアイドル、オタク、アキバのメイド喫茶でバイト中)とかいろいろツッコミどころあるメンバーが続々揃ってもうほんとにどうなるんだこれ…破綻しかしていない…
隼兵は隼兵でちょろかったしな…あれはあれで将来心配になるレベルやで…
それでまた、地味に妙なところで現実感が見えてよくわからなくなる。貧乏ネタはラノベでもわりかし見る気がしますけど僕はヒロインに生活保護が下りてるところを初めて見た。しかも口利きで。そのこだわりがすごい…のかもしれない。
この地味なリアル感と…今時だったらやらかしそうありそうといえるかもしれない展開と…だから逆に、もしかしたらという説得力みたいなものを感じたりその勢い任せの危なっかしさがまぶしかったりするところがあるかもしれなくて、この革命がどう転がっていくのかが楽しみです。
いろいろとライトノベルらしからぬ単語飛び交っていた気もしますけど、内容が難しいということはなく勢いあふれたメンバーたちの青春ラノベですから、変わった感じのものを読んでみたいというときに気軽にお手にとってみてはいかがでしょうか。
そして相変わらずのあとがきの大物感。ほんと何者なのか…
むしろこれ、迷ってる人はあとがきから読んでみるのもいいかもしれないな…このあとがきから興味を惹かれるなら本編もきっとマッチする。
そんな著者が以前に記した革命の物語はこちら。独立国をぶち上げて天下を獲るためには、というまた無茶を通すやつです。学校の部室から始まってだんだん話がでっかくなっていくんですよね。最後はやはり株とアメリカか…おそロシア…
本作を気に入った方はこちらも絶対面白いと思うので是非!
あと手段はアイドル。実はアイドル好きなのかなこの人。