読み進めていくうちに二転三転し筋の通らない謎にどこに行くのかわからない物語。だがだからこそ目が離せない。しかも「1」とあるとおり続いているわけで。ほんと続きはよ。
東京地検特捜部のお仕事
製薬会社「日本スピリ」のガサ入れから始まるこの物語。正崎善検事と立会事務官の文緒厚彦はその証拠を洗っているときに、不審で不気味で尋常でない殴り書きをみつけてしまい、その糸を辿っていくうちに「新域」と呼ばれる特区構想を巡る陰謀を引き当ててしまう…政治の闇と巨悪に挑む検察のお仕事が、舞台として用意されている。
登場人物の年齢層は高め、相手は老獪な大物連中。それらと相対する検事、正崎と文緒は巨悪をいぶり出すことができるのか…って話だと思うじゃないですか。
しかし途中から始まる不可解な事件。これがわからない。本当に意味が分からない…
こう、筋が通らないようなもやっとしたものを抱えながら、刑事の九字院や記者の半田と協力をして捜査を進めていくうちに見えてくる謎の女。そこからオカルトと呼ぶには地味ではあるが…でもなんかだいぶ思ってた方向には進んでないぞこれって読み進めた先に、さらにまたとんでもない方向にぶっとんでいってほんとどうなるのかこれ。
そしてそこから最後は次巻に続く。無情。
「新域構想」を巡る陰謀
東京都八王子市、多摩市、町田市、神奈川県相模原市を統合して特殊行政区分≪域≫として、新たな地方自治体を誕生させようとする構想。それは実質的に「第二東京」ともいうべきもので、中核市や政令指定都市を大きく上回る権限を与えられた、市、県、都は別の何か。
そんな新域の首長を選ぶ域長選挙のまっただ中に、正崎の辿っていた糸は繋がっていく。
突っ込んでいくのは検事の宿命とばかりに捜査を続ける正崎ですが、この捜査が進めるほどに正体不明、それはそれでわからなくなっていく。
でもフタを明けてみると、こっちはまだ筋が通ってる感じではありました。言ってしまえば利権絡みの陰謀論的な話で、おいちょっとってなるけどまだ理解可能。
むしろ…これから(この巻以降)のほうがおいちょっとってなってるでしょうね関係者たちは。理屈でも感情でも理解出来ない状況ほど怖いものはないんだね。
「新域構想」の目的自体は理解できなくもなく、その利権と巨悪と…日本の発展と目の前の正義を天秤に掛けていくとか、そういう流れなのかなと思っていたところでのラストなので。これほんとに新域構想に一枚噛んでた人達、どこまでが予定通りでどこまでがアレだったんでしょうか。流石にアレは全員予想外だと思うんだけど。
鍵となる「女」
巨悪を表舞台に引きずり出すために鍵となるであろう「女」がいました。政治に陰謀に女ときた、下衆の勘ぐりが当たっているであろうと踏んで正崎たちはそこに活路を見いだすわけなんですけれども、この女がまた、なんていうか本当になんなのか。
つかみどころもなく事態を分かっているのか分かっていないのかさえ端から見ていてわからなく、悪なのかと言えばそうとも言えず。しかし気づけば周囲の人間はよくわからないことになっており、読後に振り返ってみるとそのふわっとした女の印象が逆に邪悪さを浮きだたせているような感じになっています。
まだ1巻なのでそりゃ正体不明だろうと言われればそうなのですが、この女にもそしてこの小説にも何が潜んでいるのか全く読めない。検察ものかと言われたらノーな気がするしミステリなのかと言われてもノー。
オカルトというのが今のところ一番しっくり来るように思えます。でもそれは展開の意味はよくわからんがとにかく薄ら寒い邪悪さを感じるためにそう感じているだけで、また覆されそうな予感しかしません。
このつかみ所のなさ、予定調和が調和していないところが正体不明の狂気を形作っていて最高でした。
何が目的なのかが全く見えない…そこに感じられる常識では理解できない何かが恐ろしい…