いつものといえばいつもの。著者名で察した方はだいたいあってます。しかし株でマネー大爆発にはなりませんからご安心ください(時代的に証券が存在していないっぽい)
※ここから先には若干ネタバレがあります。ネタバレが気になる方は先に進む前に是非、本作品をお読み下さい
ほのぼのとした絵柄でファンタジー武器屋経営だと思うじゃん?
勇者パーティが魔王を追い詰める→魔王が逃げる→勇者、騙されて負債まみれの武器屋を買う→いろいろあって破綻しかけた銀行を買収し独裁政権を樹立する(今ここ)どうしてこうなった…いやむしろ、どうすればこうなるんだ…
お金と物語はころころ転がっていく見本のような展開ですね…
世界観としては中世ファンタジー、剣と魔法があって王様が国を治めている感じです。ただごく狭い範囲で現代をモデルにしている節があって「法人組織を売買するに当たって隠れ負債のチェックくらい誰でもしますよ」って弁護士に言われるの最早ファンタジーではない。つらい。
金策のために銀行に借金を申し込むところとか、新規事業を進めることをパーティメンバーに納得させるため「ここが勝負所なんです!」って力説する勇者の必死さ(そして理解を得られない)とかファンタジーとは…
際限なくスケールアップしていく投資規模
魔王に騙されて5000万Gの借金(この世界で1万G=庶民の1ヶ月分の稼ぎ)を負わされてしまった勇者の行く末はいかに? って感じで始まったんですが話が進むごとに割と早い段階でそれがどうでもいいようなスケールの事業規模になり話がおかしい。もうこれどこまで風呂敷を広げられるかの勝負みたいになっていて楽しい。
武器屋から始まった事業だけど、トラブルを乗り越えていくたびに儲け話のネタを見つけて拡張していくわけで。その新規事業も(現実世界で)あーアレかーアレを最初にやったら確実に莫大な利益になるわーみたいなものだから順当ではある。このへんはチートっぽいですね。あとこの世界では勇者が事業として先駆者になっているから黎明期の無茶苦茶さがあってやばいところもある。「私が正しいと思ったから事実として新聞に書くんです!」とかマスコミが大っぴらに言ったら炎上どころじゃないよね。(実際どう思ってるかは知らんけど)
一応は中世ファンタジー世界観なので、株とか証券とかは存在してないみたいだからマネーゲームにはなってないですが海上保険は出てきているから遅かれ早かれなのではないかと思ってます。インサイダーの嵐が吹き荒れる。
いっそすがすがしいほどに儲けることしか考えていない
といっても悪徳ではありません。純粋な感じで「戦争になれば利益が稼げる」とか言ってます。武器屋が。やばい。
だいたい商売ものの物語だと「お客さんの喜ぶ顔が見たくて続ける」とか「いい武器を買ってもらいたい」とかそういうのがあって続けていったりするのが多いんですがそういったことは一切無い。純粋に利益を出すことを考えていく。その姿勢に良いも悪いもない。だがそれがいい。
もともと勇者が武器屋を始めたのって何か信念があったわけではなくて、「魔王を倒した後のパーティメンバーの生活に役立ちたい」ってだけのことでしたから、武器屋にこだわりはなかった。ないから次々に儲けのネタで事業を拡張していくわけですが、それぞれもその事業に対しての想いみたいなものよりもいかに利益を出せるかってところの話しかしてなくて熱い。需要があるから供給する。結果として世界経済が発展していく。正しい。事業の進み方は結構トントン拍子で成功が約束されているものばかりに見えるので、経営者の方からするとイージーモード、チート無双に見えるかもしれないですね。このへんの感覚は「まおゆう」リスペクトかもしれない。会話進行だし具体的なキャラ名は出てこないし意識しているところはあると思います。「まおゆう」は農耕改革から始まって政治・統治を進めるみたいなところが強かったですが本作はそこを商売に全振りしているからこそのスピード感。
商売をするのにそこまで大義が必要じゃないと思っているのでそこは良いんですがほんとにお金の話しかしてなくてとても楽しいです。ここから先どうなっていくんでしょうね…むしろどこまで風呂敷広がるんでしょうね…
2巻の帯に「強力な商売敵(ライバル)登場!?」とか書いてありましたけど実際そのライバルと決戦するときはもう別の事業の話してて相手にされてなかった。これがスピード感。