心正しきものたちのたどり着く運命は、やはり過酷なのか…
※ここから先にはネタバレがあります。Fateシリーズはその話の展開、構成すべてに驚きと仕掛けが込められているようなもので、どうあっても感想というとネタバレになってしまうところがあるかもしれません。(おいしいところはなるべく残しておきたいとは思っていますが) 未読の方、ネタバレが気になる方はここで引き返し、迷わず本作を手に取ることおすすめします。
心正しきものの願い
1991年に都心で発生した聖杯戦争、それを断片的に書き出すシリーズ第3巻。今回はバーサーカー陣営、そしてライダーとそのマスターの一族サイド。
そして物語の軸になっているのは、魔術師としてではなく人としての正しさなんだろうな…という心。
伊勢三の少年などは、もはや聖者といっても過言ではない。
バーサーカーも…バーサーカーこそが理性をもってマスターを友とし、正義を唱えるというそのイレギュラーさもさることながら、マスターである來野巽の「普通の善良な高校生」っぷり。
たまたま先祖が魔術師の家系だった一般人枠ですし、いろいろと仕方ない…というより、これが普通か…というなんともいえない気持ちでもある。
このあたりはほんと「プロトタイプ」だなあと感じるところがありますね。魔眼だったり、巻き込まれた一般人だったり。正義の味方でありたいという願いだったり。
そんな一般人が普通に聖杯戦争に巻き込まれた場合、どうなるかというのは推して知るべしというところですか…
静謐の毒婦
ああもう文字通りの意味で。
静謐ちゃん…
その身体全てが毒という伝説が聖杯の力によって強力に昇華されてしまっている、中身はただの壊れた女の子。
彼女が最初からはぐれサーヴァントだった理由も、どうして愛歌に従っているかも、巽との対峙もすべて哀しい。救われない。
愛歌にある意味正しく暗殺者として、効率よく運用されていく静謐ちゃん。
感情が欠落しているような印象で…その実、一生懸命押し殺しているというのがほんとせつないですね。
魔術的利害ではない、「人の心」というものが今巻のキーならば、彼女もまたそれにふさわしいものを持っていたのかも知れない。
無垢なるもの
そしてなんていうか相変わらず蹂躙していく沙条のマスター。
これらの想いを蹴散らして、もはや沙条愛歌(チート)が無双していく物語ということに疑う余地がない。
今流行のチート主人公無双だよ! ぉぉぉ……
ただまっすぐ目的のために全く手段を選ばないその姿は、カタルシスというより脅威でしかないですが。
でも普段完全に恋愛脳な愛歌が、伊勢三の少年にだけは珍しい反応の仕方をしていたなあとも思いました。
セイバー絡み以外ではあんまり余計なことをしないイメージあったんですよね。
セイバーを喜ばせるためなら手を尽くすけど。
だから伊勢三の少年に対するあの悪意は、本人的には気まぐれな無邪気なイタズラなのかもしれないけどちょっと意外でした。
……意外でした、で済むようなかわいいもんじゃなかったですけどね…(震え