舞台をヴェネツィアに移してお嬢様(という出自のお転婆娘)画家アルテさん大活躍の5巻。いろいろと自由である。だがそれがいい。
水の都の新天地
時は16世紀初頭、フィレンツェから舞台を水の都・ヴェネツィアに移して始まる新章となる今巻。特徴的な水路の移動やその街の様子に圧倒されつつ、新しい環境での生活が始まるアルテ。
生活の様子とか街の描写とかも細かくて、そういうところも見ていて楽しいところもある
そして一筋縄ではいかないワガママお嬢様、カタリーナの家庭教師として始まる新生活はお嬢様にいろいろ振り回されて大変だけれどワガママっぷりならむしろ負けてないと言わんばかりに打ち返すようなアルテの自由さが大変素敵。
ハツラツとしているお嬢様はいい…はっきりわかんだね!
カタリーナもただのワガママ娘ではなくて、アルテと打ち解けていくにつれてその行動の謎にも合点がいくようになってくるんだけど、逆にこの時代の一般的なそれとして、アルテと出会ってしまった影響がどう転ぶかというのはうっすら心配になるところもあります。
お嬢様たちの「やりたいこと」
ヴェネツィアに渡ってからこっち、よりクローズアップされていると感じるのは、この時代の貴族と一般市民、女性の抑圧みたいな空気。
アルテ自身は貴族の生まれだけど反対されようとも家を飛び出して画家に弟子入りそしてフィレンツェからヴェネツィアへという自由っぷりなのでこう、今までも「負けない!」みたいなつよさがあったんですけど、ゲストのような感じでヴェネツィアに来てからのお話は、そんな(ある程度の自由を勝ち取った)自由人の目を通して見る時代の風景みたいなところも。
そこで何かを主張したりとかせずに、「どこに行っても変わらないんだなあ」と大笑いできるようなところが、このシリーズの前向きな雰囲気作っている。
カタリーナの隠し事も、今だとただの趣味みたいな感じで普通に思えるんですが、当時からするととんでもないことなんでしょう…って思うとユーリおじさんも当時的には割と常識外れなんだろうな。
今の目線から見るとおかしなことがいっぱい出てくるのは、過去のヨーロッパなどを舞台にした物語あるあるですけど、逆にそういう時代を経て今があるということでもあるんですよね。
風変わりに輝く画家の周りに与える影響
そんな中で変わり者扱いされながらも自然体で前向きなアルテの輝き。
カタリーナは少々闇を抱えてそうだけど、自分と同じような出自(貴族)で好き放題やっているように見えるアルテの存在にはすごい影響を受けるんだろうと思います。
もう少し歳を重ねていたら…妬んだり羨んだりと闇が育っていたかもしれないけど今はまだ素直。素直かわいい。やったぜ!
やっぱり曇らない笑顔がいいですね。ヴェネツィア編はまだ続きますけれど、きっと良いようになってほしいです。