ええまあ、作品の雰囲気から察する感想としては著しく間違っているような気がしないでもないですが最後まで読んでから思い出されるのが松永7段なんだもの

(「3月のライオン」より)
※ここから先にはネタバレがあります。ネタバレっていうか、流石に12巻分の感想ともなると先の展開がある程度というか…
孤独な天才少年棋士が歩んでいく物語。
高校生にしてプロ棋士として活動している高校生、桐山零。しかし家庭の事情から一人家を出て、学校でも孤立している。
そんな彼を文字通り拾ったのが川本家のあかりさん。三姉妹の長女でお母さん代わり、猫とか何かとかすぐ拾ってきてしまうお姉さん。いいなあ。
零くんは川本家にたびたび顔を出すようになっていて、その家族のひなたやモモにじっちゃん、学校では将棋好きの林田先生に野口先輩、また将棋でも島田八段やライバルの二階堂なんかと関わっていき、次第にその孤独さが、周りの人達とのあたたかな繋がりでほぐれていくというとてもやさしいお話です。

(「3月のライオン」より)
ごはんがおいしそうなのとねこがふくふくしてるのは正義だってね。

(「3月のライオン」より)
ところどころ入ってくる料理がまた手作りおいしそうで、あったかい雰囲気がにじみでてくる。そうめん回が好きです。
正直なところ、この作品が将棋を題材にしたものというのは結構最近まで気づいていなくて、表紙の雰囲気とかからきっと青春恋愛ものなのかなあとか漠然と思っていたところではありました。(そしてそれはそれで間違ってなかったような、間違ってるような…
それぞれがいろんなものを抱えて、最善手なんてないかもしれないけど信じる手をひとつひとつ打っていって、ぶつかったり救われたり。意外とへビーな家庭の事情やいじめの問題なんかと向きあいつつ、向き合いつつっていうかねじ伏せたりもしつつ零と川上姉妹がひとつづつ歩を勧めていくようなところの情緒はほんといいですね。
将棋の対局を扱っているということもあってか結構すぐに時間が過ぎていってしまい、劇中ではもう2年ほど経過しているのですが、最初の頃の零くんからすると、ほんといい風に変わっていったなあというのが雰囲気で分かってほっこりするところもあります。
最初のほうは、結構シリアスなものを抱えてる雰囲気のほうが強いと感じるところもあったのですが、それが薄れていっているように思えるのはきっといいこと。

(「3月のライオン」より)
物語を彩る個性強すぎる棋士の皆さん

(「3月のライオン」より)
このクマほんとすき。「穴熊から速攻出てくるようにしてくださいというオーダーに本当に困った」という先崎九段(将棋監修)のコメントと合わせてじわじわきすぎる。
それはさておき、いや、なんというかこのおっさんは出番ほとんどないし別にそんないいんだけど…
将棋を題材にしているから、もちろん年配の棋士の方々もわんさと登場して物語を彩る、彩るっていうかそんなやさしいもんじゃなくて隙あらば喰われるような勢いで名エピソードが展開していきます。これがまた面白くてアツくて…
1、2巻の頃は零くんの独白っぽい感じが中心の静かな進行だったんですが、彼の世界が広がり様々な人が関わってきた結果がこれだよ


(「3月のライオン」より)
棋竜、とは…

(「3月のライオン」より)
なんといいますか「りゅうおうのおしごと!」と並んで俺の中の棋士への風評被害が留まることを知らない

(「3月のライオン」より)
「立てば不吉」「座れば不気味」「歩く姿は疫病神」滑川七段。実家は葬儀屋。

(「3月のライオン」より)
どうみても893…それも古いタイプの矜持を背負ったような棋士、後藤。零が敵視している相手でもあるんですが当然一筋縄ではいかない。

(「3月のライオン」より)
ボドロ永遠のライバル二海堂くん。ふくふくしつつ表裏なく熱い男でもあります。
モデルとなっているのは村山聖棋士のよう。
最近、映画もやっていますね。記録映画のような雰囲気でしたがそれでも彼の破天荒で愛されキャラだった感じが伝わってきた(何

(「3月のライオン」より)
そして地味に現れて、その後に大きく関わってくるのが島田八段。二海堂の兄弟子でもありちょくちょく出てきて、今ではもしかして大人側の主人公なのではと思えるくらい。

(「3月のライオン」より)
まあ、なんといいますか、がんばってほしい人ではある…
つーかめっちゃ老けたなこの人。大丈夫かほんとに…胃痛が何かの伏線じゃなきゃいいけど…
そして、そんな彼らよりさらに一線を画する強さをもつ名人、宗谷冬司。

(「3月のライオン」より)
彼が登場するときの静かな存在感、浮き世離れしたその風情が本当に痺れる。
このほかにも一癖も二癖もある棋士たちが人生全部つっこんで鎬を削ってるわけだから面白くないわけがない。
零との対局以外も、いやむしろ全体としてはそっちのほうが多いくらいかもしれないんですが、全然アツいバトルばかりで手に汗握ります。
将棋はどれだけ強くても常勝無敗ということはあり得なく、また一本勝負じゃなくて複数回の対局になることが多いので回を重ねるごとに余計崖っぷち感が出たりして最高ですね。
しかしそんな濃いすごいメンツの中で、肝心の零くんはこの先生きのこれるのかというと

(「3月のライオン」より)
こっちはこっちでエンジンかかってきちゃてるから…
棋士、つえぇなあ…
ほっこりとシリアスに、展開していく人間ドラマ
こういうぶっ飛んだ勢いとアツさも大変魅力なんですが、桐山零と三姉妹を中心にした日々の物語もまた目が離せず、読み進めれば読み進めるほど続きがどうなっていくのかという気持ちが高まります。
家族の問題とかいじめとか、結構シリアスなところに入り込みつつ過ぎていく日々。
それでも基本的にはこう、優しい雰囲気はあって、それとの落差がまたすごく感情を揺さぶってくるところでもあります。
なんかこの、すごい薄氷の上で成り立っていたようなものという感覚も、読み進めるとその薄氷がだんだん厚く、割れないようになっていくようなところもあって、それと過ぎ去っていく月日が重なるとああー、なんかこう時が経っている…っていう妙な感じに。
みんながしあわせになれるところにたどり着けるといいなと思います。

(「3月のライオン」より)
僕としては香子姉さんのこじらせっぷりが最高なのでMORE DEBAN。

(「3月のライオン」より)
後藤さんとの因縁みたいなのも最近忘れられてそうで(それはそれで平和なんだけど)いやほんとに、どうなっていってしまうのか。
実はなんでまた一気に購入したかというとBOOK☆WALKERで全巻セット買い20%オフとかしていたうえに12日までコイン30%バックなんかもしておりまして絶対面白いことはわかっていたからいつ買うの? 今でしょ! みたいな勢いで購入して大正解。
若き日の神宮司会長スピンオフなんかもあるようなのでこれもきっと間違いなくアツい。
アニメも絶賛放映中で、ネット配信はj:comとHuluがやっているよう。