ハッカーというやつはキョドってるコミュ障のパソコンオタク。投資家というやつはスカしてるふうでどこか得体が知れない。そんなイメージそのままで最高に格好良い生き様に痺れながら事件をくぐり抜けていくスリルを味わうというほんと面白いクライムサスペンス。
ハッカーとエンジェル投資家の邂逅
この物語は天才的なスキルを持った是枝一希少年を、彼がむしゃくしゃしてやった消費者金融システム連続クラック事件の調査を依頼されていた投資家の坂井大介が見つけ出して、いつしか相棒としてサイバー犯罪に挑んでいくというものです。
バイトをクビになってむしゃくしゃしてやった。
動機としては最低の部類なんだろうけど、それがものすごく悲痛で居場所のない叫びでもあって、是枝をスカウトする坂井とのやりとりは本当に胸にくるものがある。
第一話の、このシリーズが開始した本当に初っぱなの話で、ここが是枝の運命の分岐点だという感じが本当に好き。
最強の矛が最強の盾となり得るか
その後の紆余曲折で導き出した方向が「攻める」セキュリティ。このね、仕掛けてきた連中にやり返すというガチの殴り合い。痺れる。
またその仕掛ける過程もすごいリアリティがあって、具体的なコードとか手順とかはもちろん省略されているんだけども、その臨場感がすごいですね。
スパコンでパスワードクラックするところの坂井との連携とか、遠隔操作された車の操縦システムへのハッキングとか、資金洗浄システムの裏をかいてのアタックとか。
どの事件もサイバー犯罪としてありそうで、それを打ち破るのもまたなるほどみたいな説得力があります。
…まあ、リアリティいうたら、ブラック企業で過労死した先輩の抱えていた仕事のコードがパスワード分からなくて納期間に合わなくてピンチみたいなのはほんとつら。
果たして救われることがよかったのだろうかという釈然としない気持ちにすらなる…
是枝少年の成長物語
それで最初は、ほとんど回り全部を敵に回すようないきおいで何言ってるかわからないような是枝少年でしたが、そういう事件を通じて知り合った人たちとの交流でだんだんと世界が広がって行っている感じがして、良くも悪くも変わっていく、サイバー犯罪事件を題材にしている人間ドラマとしての魅力もあります。
それまでほとんど怒鳴られるか笑われるかだったであろう人間関係から一転するポイントになるのは第一話のそれになるので、振り返るとやはりあの分岐点が感慨深い。
またそういう成長には、メンターとしての坂井大介が強く影響していて、要所要所でそれを導きながら進めていくのが格好良い。
本編はどんどんと事件の規模や話が大きくなっていっているので、これがどこまでいけるのか。天下を獲れるのか続きが楽しみです。