ジャンプ+で大正処女御伽話-厭世家ノ食卓- って連載が始まっていて、どうやら本編があるらしいと2巻まで読んでみたのが最初。「処女」と書いて「オトメ」と読ませるのは馴染みがないのだけど、昔言葉だったりするのかなあ。
大正十年を舞台に、事故で右手が効かなくなり放逐されたひねくれものの青年と、借金のカタにその将来の嫁として充てがわれた少女の恋物語。シチュエーションと時代背景から陰惨なものになってもおかしくないけれど絵柄と夕月の人徳でほっこりしたストーリーになっててとても良い。良いんだけど良いって言って良いのかわからんような気持ちも同時に感じさせるの。
もう5巻で完結している作品で、2巻までは千葉の田舎に厄介払いされた珠彦青年と、そこにやってきた夕月の日々の暮らしで時間が過ぎていきます。冒頭で紹介したスピンオフ連載もこの頃の話でけなげな夕月にほだされてく珠彦の様子がよくわかると思います。やってきた妹ちゃんとか村の意地悪な美少女とかひねくれものがことごとくほだされていく。
このままゆるゆる年月を重ねていくんだな…って思ってたら2巻終わりからの急展開。
すっかり平和すぎて大正十二年に何が起こるのか って全く意識の外で…日常から非日常に一気に叩き込まれる気分まで味わうことになりました。珠彦の「誕生日(9/1)にはろくなことがない」みたいなのもずっと伏線だった。ジャンプ+での無料公開2巻までになっているの絶対わかってやってるとおもいます。続き買うしか無いじゃない…
ここがターニングポイントになって3、4、5巻で決着するまでが怒涛の展開。「羅刹」と呼ばれた志摩の一族と珠彦がどう向き合っていくかが本題になります。大正当時の男尊女卑、家父長制の価値観は今の間隔からすると異常に感じるところもあって、昔の話ではあるけどきつい。ただそういう時代だからこそ珠彦は覚悟を決めていったのかもしれないし。親子の関係も含めて良い方向に向かうのかも、と思うときもあったけど。いや多分、何も邪魔がなければ良い方向に向かっていたんだろうって思うとやっぱり諸悪の根源は珠代さんだよ。
そして登場人物の(特に夕月の)日常や雰囲気はほっこりしたままでもあるので、落差の激しさにまた悶えることに。はじめから陰惨な話なら読んでいる側も心構えができるのだけどそうではない。むしろ大正十二年にぶつけてきてるあたり容赦なくどう転がるかわからない。御伽話って「本当は怖い」とか言われたりするじゃない…
「厭世家ノ食卓」のほっこり加減につられて本編も読み始めたらまたすごいところに来てしまった感じがあり、いやでもふとしたきっかけで読めて良かったとも思ってます。
また別シリーズになっていますが「昭和オトメ御伽話」は本作の続編でもあり後日談でもあるので、もし本作気に入れば続けて読むことおすすめです。「羅刹」の本領はこちらのほうが発揮されているまである…想像以上にやばい人だよ珠代さんは…
2021年10月からアニメも始まるみたいです。キャラ紹介に白鳥策とことりちゃんがいるってことは5巻完結までちゃんとやるのかな。先に全部読んじゃったのもったいなことをしたかもしれないって気持ちはちょっとあります…
7/23に始まったスピンオフも。こっちは平和なはず。羅刹の影に怯えなくて済む。本編に疲れたら帰ってくる場所。時間軸が初期のものだから懐かしいようなキャラの関係性がリセットされててもやるような…