ふらっとさまよっていたら見つけたので読んでみました。
確かにこのマンガ、気に入る人は気に入る類のものだと思うので、あれこれ言うより試し読みしてみてもらったほうが早そうな気がします。
ストアのほうで試読できるのでまず読んでみてください。
というかですね。掲載情報見たら最後の第四幕書き下ろしじゃないですか。これがなかったら完成しないというのに…
もし連載は見たことあるけど単行本は読んでいなかったという方がいたら、是非読んだほうがよいです。ほんとまじ。
それはそれとして、野暮を承知で少し感想。
毎年開演される「レストー夫人」
(「レストー夫人」より)
舞台となっている学校では、二年生が毎年「レストー夫人」という演劇を行います。このお話は、その公演にむけて取り組む学生達の日常を、淡々と綴ったもの。
(「レストー夫人」より)
主役である「レストー夫人」役の志野さんを中心として、連作短編が続いていきます。
特に大きな事件とか深い闇とか、何かの秘密が明かされるわけではありません。
学生達の日常に入ってきた「演劇」という非日常
この学校は演劇の専門学校などではないので、当然のことながらみんな素人。
その学生達が「レストー夫人」の劇を軸に、少しだけ変わってみたり、何かに気づいてみたり。
この年代特有の不安定さや不自然さ(後から思うと転げ回る類の奴です)も相まって、なんともいえない心の動きを表しています。
(「レストー夫人」より)
アキノリとユーフラシー、井上さんと鈴森さんのこの微妙な距離感とかすごい好き。
志野さんと鈴木さんと石上くん
そのなかでとびきりミステリアスな志野さん。
(「レストー夫人」より)
「レストー夫人」役の志野さんは、子供の頃からの情操教育の結果として、独特の世界観を持っている感じになっているのですが、そこに関わってくるのが記録係の鈴木さんと、衣装係の石上くん。
劇の準備の進行を記録する係の鈴木さんは、だんだん志野さんが主人公の物語を書いているような気分で記録をつけていき、志野さんもそれをお気に入り。
石上くんは劇の衣装を作るためにいろいろ質問をしたりして…結果できたものはよくわからなかったけれど、それも見方を変えると…という。
志野さんにとって内面と外見、その二つから「自分をみつけてくれた」みたいなところがあったのかなと思います。
この、端から見たらへんてこな感じでも当人にとってすごく嬉しくてすごく大事という感覚、心に染み入る。
最後に志野さんが苦笑してるのほんと嬉しそうで。
また「自分らしさ」というのも、結局のところ他者から観測されて生まれる、素敵でいい加減なものなのかもしれないなとか思ったりもしました。
そして劇はつつがなく終わり、皆はまた日常に戻っていきます。一時だけの非日常だったのかもしれないし、日常の役回りを演じに戻ったのかもしれない。