つんどくダイアリー

つんどくダイアリー

わりと好き勝手書いてるからネタバレてたらごめんね。旧「怒濤の詰ん読解消日記」。積まれてしまったマンガ、ラノベなどを読んで感想を書いています。結果として面白い本の紹介だったりまとめだったりになってる。/端末の表示によると、あと740冊/※本サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。ページ内のリンクがアフィリエイトリンクの場合があります。

天使と悪魔の狭間で人間の未来を切り開け! アプリ「Heaven×Inferno」

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 開発トライエース、配信NTTドコモの本格ファンタジーRPG。

 天使と悪魔、その間で揺れる人類と世界の未来を切り開くシナリオが熱い。

崩壊した世界で

 この世界は天使と悪魔の戦争により滅びかけた世界。人類はなんとか生き延びていましたが、今度はその天使や悪魔の力が暴走した≪ウォークス≫と呼ばれるものたちの脅威にさらされてしまいます。

 そこで対抗するために、人為的に天使や悪魔の力を宿し戦う存在、≪ネフィリム≫が造りだされ、その戦士達の活躍で混乱が収まるかーーと思ったところに大崩落。

 世界が虚無に呑まれていくことを、自らを犠牲に救ったネフィリム達。

 それから10数年後の世界で、目覚めたプレイヤーは未だ続くウォークスたちとの戦いに、その身を投じていくことになります。

 少しダークなファンタジー世界観、天使と悪魔の力を憑依させての戦い、目覚めたプレイヤーにまつわる謎など良い感じに惹かれるストーリー。

 トライエースというとスターオーシャン(SFC)やヴァルキリープロファイル(PS)などが思い出されるおっさんですがだいたいそのイメージな感じです。

 またシナリオに成田良悟氏が関わっておりますのでどれだけキャラが増えてもきっと安心。

ゲームシステムはストーリー+バトル

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 ゲームシステムは、ストーリーを進めるアドベンチャーパートと、敵を倒していくバトルパート。オーソドックスなシステムといえます。

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 バトルパートではなんかみんなふよふよ浮いており。

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 右下のキャラクターをなぞって攻撃してコンボを決めて超必殺技!

 コンボが決まると天上または地面が割れてステージチェンジするところが結構お気に入りです。

 あとはガチャでメンバーを揃えて、レベルを上げて進化させていくというもの。

 ゲームのメインはストーリーを進めていくことですね。

強制終了とスペック

 しかしこのゲームは結構スペックが要求されるのか、うちのZ1さんだとそこそこ強制終了になってしまいましたね…

 (Z1がもう何年前のだよって話はあります)

 症状からしてスペック不足の感じが強いので、何度も強制終了してしまう、突然アプリが落ちるという場合には「その他 > オプション > パフォーマンス設定」を「最低」にするとマシになるかもしれません。(もともと「低」だったのでその下はそれしかなかった…)

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 画面はだいぶ粗くなってしまいましたが…タップの反応なんかは明らかに改善されたので、やっぱりスペック不足ですね…

 このあたりは(改善できるかはわからないけど)なんとかがんばってほしいと祈りたいです。。

Heaven×Inferno
Heaven×Inferno
無料
posted with アプリーチ

公式サイト

www.heaven-inferno.jp

千の種、万の命を繋いできた薬師と、角守の少年の旅の未来に 「続 この大陸で、フィジカは悪い薬師だった」感想

続 この大陸で、フィジカは悪い薬師だった (電撃文庫)

 今巻は結構、宿命を感じさせたり急接近(どころではない)しちゃったりしてるなあと思っていたら、いい最終回を迎えてしまった…

命を繋いでいく薬師の旅

 ファンタジーな生き物がありふれている世界で、その世界にあるエイル教の教義に従い「害獣」(ファンタジーな生き物は総じてこう呼ばれています)を退治したり異端者を捉えたりする「角守」という職の少年アッシュと、その害獣を治療して回る異端者のフィジかわいい薬師フィジカのファンタジー動物記第二巻。にして最終巻。

 今巻はアッシュの父親、フィジカの契約や家族の話、迷いなどキャラクターにクローズアップしているところが多く、それぞれの人物のエピソード、フィジカたちのその後に繋がるような話がメインかなと思います。

 人狼ゲームをモチーフにしているエピソードも結構変わり種だったし。エイル教の聖人にまつわる話なんかもありましたしね。

 それによって動物記っぽさが薄まっているところはありますが、読んでて「なるほどなあ」というケルピーやワイバーンのお話がささっと入ってくるから安心です。カーバンクルは結構まさかのカーバンクル。俺ただの魔法跳ね返す小動物としか見てなかったから…でも(正体については)そういう説もちゃんとあるみたい。

 しかしみんな(人間の尺度で測ると)長寿過ぎてなんていうかファンタジー…むしろ逆に人間が短命なのがおかしいみたいな感じになるところまである。

急速成長した妹の登場!

 故郷の妹扱いだったロッテがいろいろとひっさげてダイナマイトに参戦!

 …いや、ほんとにいろいろと予想外な感じですね。完全に兄より優れた妹ですし。でもKAWAIIから正義。温泉はなお正義。

 そして妹参戦によってアッシュの鈍感さがますます目立ってきていてほんとこれ。

 まあ…妹キャラはえてして家族なわけでもありますけどね…というか家族だしね…

 この「家族」というのも実は結構隠れたテーマなのかな。種を繋ぐということはつまりそういうこと。

紡がれていく未来

 そして迎えるエンディング…いい最終回でした…

 アッシュは最後までアッシュだったけど。らしいっちゃそう。アッシュ…

 しかし、ここまでの旅路にはいろいろあったのだろうけれど、それが語られなかったのは残念でもあります。

 ありますけど…なんか人間の時間感覚だと巻数がいくらあっても足りないようなストーリー量になってそうな気もしてなかなかえらいことになるかもしれない。

 エイル教という教え(と利権)によって人間が他の種族を(結果的に)迫害している世界で、「人間も世界にいる一つの種族、でもその人間から見た世界」というちょっと違ったファンタジー観を感じていたのは、もしかしたらこの時間感覚、種族による寿命、老化速度の違いがあるのかもしれないです。

 フィジカからしてもう完全にかわいいんだけど、齢100歳を越えてるみたいだからなあ…エルフ族ほんとすき…

 でもアッシュがフィジカの尻に敷かれてるのはまあきっと変わらないので、なんていうか、きっと世界は続いていく。

「家族」という形とエリアスのこころ 「魔法使いの嫁」6巻感想

魔法使いの嫁 6 (コミックブレイド)

 今巻は家族のお話、だった気がします。

英国でのクリスマスプレゼント選び

 レンフレッドの護り手アリスとチセ(&ルツ)のロンドンウィンドウショッピング。

 からの、ストリートチルドレンだったアリスがレンフレッドに拾われて…という、アリスの過去話回。

 ありがちな話かもだけど、そうやってやさぐれていたアリスとチセが仲良く歩いているのは微笑ましいですね。 

 チセもその体質で孤独な日々を過ごしていたからか、クリスマスのことは考えてもいなくてそうだろそれならレッツショッピングという流れはこの漫画的には珍しく今風な感じですけどお嬢様っぽいチセとさばさばした男っぽいアリスの組み合わせはむしろデートっぽい感じすらある。いいぞ。

 しかし、チセもアリスも恋とか愛とかストロベリーな感じではなくてほんと家族に贈るような雰囲気で(レンフレッドはともかく)エリアスの旦那はもうちょっとがんばったほうがいいんではないだろうか…

拐かされた弟と、探す姉

 そして明けて25日。エリアスの旦那からのプレゼントがえらいことになってるのが出オチ力高くてすきです。毎日生えてくるんだろうかあれ。

 チセが貰ったプレゼントのお礼を言いにエリアスと外出したところで、弟を探しているステラと出会ってその捜索を手伝うことに。

 原因とかはそんなんただの子どもの口げんかやろって思いますけど、そこにつけ込んでくるのがまた魔性のものというやつなんですねという、ちょっと教訓めいたおとぎ話的な感じもしました。厄介。

 エリアスが人に何かを尋ねるというのは非情に珍しい感じでもあったし、こう、関わりが増えていくことでエリアスの心も変わっていっているのかなと思うところもありました。

エリアス・エインズワースの立ち位置

 世捨て人の魔法使い然として登場して、(チセから見て)師匠 兼 父親ポジション(後に旦那)かなあという感じだったのですが今巻では子どもっぽい…というより、(精神が未成熟という意味での)子どもっぽさがあるようなところも感じてよくわからない。

 よくわからないけど、そういう人の型に嵌めて理解しようとするからあかんのかもしれないなというのが、この漫画のテーマになってる「人外x少女」を見て思いだしました。

 永く生きているだろうけど、通ってきた道が人のそれとは違うだろうから…

 心の在り方は人と近いものがあるようだから、チセが身近にいるようになったことで変化していくんだろうなあ、というのがだんだん増えてきている気もします。

 人間が順を追って夫婦になるなら「恋人」から「家族」だけど、そういう意味で「恋人」はまだ家族ではないから、ストロベリる前にもう順序スキップして家族になっているのかもしれないですねチセとエリアスは。ただそれが夫婦なのかは怪しい気がするので、チセのほうが成長したらまたわからんけど… (チセも結構、精神的な成長止まってる気がするんですよね。その生い立ちからというのもあるかもだけど)


 しかし旦那、あの過保護すぎるのは年頃の娘さんにやると嫌われるで…チセが素直クールに流してくれる性格だったからよかったものの…

 そして特装版。チセの過去話「星待つ人」前編が収録されているDVD付。

 内容の感想はこちらに書いてありますので、よろしければ是非。

tsundoku-diary.scriptlife.jp

 しかしアレです、まさかメイキングのほうが収録されてないとは思わなかった…普通逆なのでは…

FGOで編成キャラの左下の謎の数字がようやくわかった

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(「Fate/Grand Order」より)

 ええこの、いつのまにか表示されるようになっていた謎の数字。

 地味に気になっていたけれどそんなに重要な意味はなさそうだったのでほっといてましたが、一念発起して調べてみました。

結論からいうと

 そのキャラのスキルレベルでした。左から順に1つめ、2つめ、3つめ。

 スキルレベルは正直あんまり気にしてなかったので全然気づかなかった。

news.fate-go.jp

 にある、

・パーティ編成およびサポート編成画面にて、各サーヴァントのスキルレベルが一覧できる表示を追加します。

が該当するのでしょう。



 別に改まってどうこういうほどのことでもないですが…調べるとき「左下の謎の数字」くらいしか検索ワード思いつかなくて(そして当然何も分からなかった)もしかしたら誰かの役に立つかもしれないから置いておきます。



 それはそれとして圧倒的に素材が足りない。種火も足りない。何もかも足りない。

引っ越しの時に発掘された手放せないマンガまとめ

 ただいま引っ越しの準備をしておりまして。

 そうすると、ほら昔のマンガなんかが一杯出てくるわけで。今は電子書籍があるから…と結構思い切って整理つけておりますが本音を言うと全部手放したくない。逆にいうと電子化されているものは容赦なく整理付けるべき。でもなんか、手元に残してしまうものもあるのですよね…

 そういうのをちょっとした記録代わりに紹介してみたいと思います。だいぶ古めで完結済み or 単巻が多いです。

朝霧の巫女

朝霧の巫女(1) (ヤングキングコミックス)

 審神者の能力を持つ少年、天津忠尋を狙ってくる物の怪達と、忠尋を守る柚子たち稗田三姉妹を中心にしつつ、日本神話をベースにした世界観の雰囲気も素敵な伝奇マンガ。つまり巫女。

 全9巻完結済み。

妖の寄る家

妖の寄る家 (ヤングキングコミックス)

 昭和初期の帝都で骨董屋、兼拝み屋を営む天津忠明と助手のこまさんが怪異と相対する表題作「妖の寄る家」を含む短編集。同作者の「朝霧の巫女」に繋がる話でもあります。

 全1巻完結済み。

スタンダードブルー

スタンダードブルー (ヤングキングコミックス)

 沖縄にある海上都市「スタンダード・ブルー」にやってきた志磯が、「海の何でも屋」を経営する祖父の仕事を手伝いながら成長していく海洋ロマン。海はいい…

 全1巻完結済み。

コンシェルジュ

コンシェルジュ (1) BUNCH COMICS

 まるで魔法のようにお客様の問題を解決するベテランコンシェルジュ最上拝と、その最上の元に配属された新米コンシェルジュ川口涼子が、ホテルを訪れるお客様のために活躍していくドラマ。1話完結で進んでいく連作短編で、涼子の成長も見所です。

 全21巻完結済み。

 その続編「コンシェルジュ・プラチナム」や「コンシェルジュ・インペリアル」もあります。

Holy Brownie

Holy Brownie (1) (ヤングキングコミックス)

 地味にひっそりと時にはど派手に歴史に介入していく神の使いの妖精さん、ピオラとフィオのお話。ヤクい。あとだいたいエロす。

 人の業と性は避けて通れないという摂理を感じる…

 全6巻完結済み。

こはるびより

こはるびより(1)<こはるびより> (電撃コミックス)

 メイドロボが実用化された日本で、そのメイドロボであるゆいとご主人様の村瀬さんの日常ラブコメディな感じのコメディ。とにかくかわいい枠。

 全7巻完結済み。

DOLL MASTER

Doll master 1 (電撃コミックス)

 趣味で人形作りをしていた辻本雛子が、凄腕の人形師具津巧の腕に惚れ込んで、さらに具津の作ったフィギュアが動き出してしまったところを見てしまってもうこれはと弟子入りしてフィギュアモデラーの道を歩み始める…みたいな。

 フィギュア製作を扱った漫画は珍しいかもしれない。

 全5巻完結済み。

もっけ

もっけ(1) (アフタヌーンコミックス)

 勿怪、いわゆる妖怪怪異の類いが見える姉・静流と、その勿怪に取り憑かれやすい体質の妹・瑞生の日常を描くゆるゆるっとした漫画。でもそれなりに九郎がうかがえる。

 勿怪が(普通の人には見えないけど)身近で自然なものみたいな価値観の、良い感じに日本的雰囲気のある漫画です。

 水木しげる的妖怪観が好きだと面白いと思う。

 全9巻完結済み。

アキバ署

アキバ署!(1) (アフタヌーンコミックス)

 警視庁外神田警察署ハイテク犯罪相談室担当、エリート技官・久遠あまねとアナログ刑事・伊武一弥のコンビがハイテク犯罪に挑む! というハッカー漫画。

 当時も今も珍しい、結構ガチに電脳犯罪を扱っていたりします。

 全3巻完結済み。

スズログ

スズログ 01 (電撃コミックス)

 隕石の衝突で地球が廃墟となり、宇宙に逃げることができたわずかな人類が生き残って70年。その地球で生き残っているVRネットワークにダイブし、失われた情報をサルベージするダイバー、鈴絽の活躍を描く。

 このSF観とかっこかわいさがたまらないです。

 全3巻完結済み。

猫神やおよろず

猫神やおよろず 1 (チャンピオンREDコミックス)

 ぐだぐだしている猫神さま、繭とその世話をしてる柚子とわらわら寄ってくる神様たちのぐだぐだっとした日常。和風メイドっぽい和風は正義。柚子っちー!

 全6巻完結済み。

まにぃロード

www.mangaz.com

 アキバで行き倒れてた暑苦しいオタクの武藤武蔵が、助けた三姉妹の店をホビーショップ「まにぃロード」として繁盛させていくためにあれやこれやの大奮闘。

 ネタもミリタリーだったりコスプレだったり同人だったり多種多様。こういうの好きなんよね。

 全3巻完結済み。

 続編の「ぷりてぃまにぃず」もあって、こちらも全3巻完結済み。

www.mangaz.com

アイリス・ゼロ

アイリス・ゼロ 1 (MFコミックス アライブシリーズ)

 「アイリス」という特殊能力を子ども達皆が持っている世界で、その「アイリス」のない高校生、水島透が周囲と関わっていったり、「アイリス」にまつわる悩みだったりが描かれていく青春ドラマ。

 透はアイリスを持っていないけど、逆にそれがこの世界では特殊なことで、その状況を機転を利かせて乗り越えていくようなところが好きですね。

 既刊6巻。続いて…いますよね…?

妖怪HUNTER 闇の客人

妖怪HUNTER (BUNCH COMICS)

 諸星大二郎の名作「妖怪ハンター」より、鬼祭りの話を原作として1冊にリメイクされた作品。「鬼祭り」という儀式を観光資源として復活させようとする田舎の村と、それにまつわる怪異に稗田礼二郎が関わっていくというもの。

 妖怪ハンターシリーズはこれで興味を持ったところがあるので印象深い一冊です。

 全1巻完結済み。

七人の武器屋 1/7

七人の武器屋1/7<七人の武器屋1/7> (ドラゴンコミックスエイジ)

 「武器屋エクス・ガリバー」に集った7人の店員、そのハチャメチャな日常を連作短編風にまとめた外伝的なマンガ。このコミカルな感じがたまらないです。

 全1巻。

 元になっているラノベ「七人の武器屋」を知っているとより楽しめて、知らないとちょっとキャラが唐突かもしれないからそちらもぜひ!

ブラッドハーレーの馬車

ブラッドハーレーの馬車

 修道院から少女がドナドナされていく話。

 全1巻完結済み。








 ええ、そうです。こういうことしてるから整理が進まないんです。

 古いものが多いですが、逆に完結している&電子書籍 or 古本で買えるものが多いので、まとめて手に入れやすいのではと思います。電子書籍は在庫切れがない。良い時代になった!

 気になったら是非、読んでみて下さい。

すごく等身大の、恋と青春の物語 映画「聲の形」感想

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(C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

 この高校時代のきれいな絶望感と救いとすれ違いと人と人とのつながりが最後に流れる主題歌「恋をしたのは」までセットでもうほんと最高。

かつて悪ガキだった少年と、いじめられていた少女

 まず、本作品の主人公である石田将也。将也はおとなしい、というよりどこかおどおどしている雰囲気をもった高校生なんですが、彼がそうなっていることにもうっすらと理由があって、まだ小学生だった頃のやらかしが根っこにあるのですよね。

 小学生の悪ガキだった頃に、転校してきた西宮硝子をからかって、それが(周りの状況などもあって)どんどんエスカレートした挙げ句の結末を迎えて、そしてだんだんと心が沈んでいくけれど、ふさぎ込んで引きこもるほどの重傷でもない…というようなつらさ。

 硝子はろう者、つまり耳が聞こえない人で、悪ガキからしたら格好のいじめ対象だった、というところだけではなく。耳が聞こえないことによって周囲の子どもに負担を掛けざるを得ないというところが転じて、周りの子ども達からの反発が嫌がらせという形になったり、硝子自身のおとなしく優しい態度もまたそれらをこじれさせていく(というかああいう状態になったら硝子自身がどう振る舞おうとこじれるとは思う)っていうのが京アニクオリティの第三者視点で丁寧に描かれていってつらみしかない。

 この「第三者視点」感覚っていうのがすごく不思議な感じになるんですよ。子どもの頃にいじめられてる系エピソードって、だいたいヒロインが泣かされてて主人公に助けられて惚れる原因になるみたいな、気持ちが動く主観的なそれが多いと思うんですが、なんというか淡々とシミュレーションしていっている感じ。それでいて、いやだからこそつらい。

 だって将也たちが全面的に悪いかっていったら…いや悪いんだけどさ…っていう、このもやっとした歯切れの悪さがね。結果的にエスカレートして、冗談じゃ済まないレベルになって、それが将也に返ってくるさまは因果応報としか言えないけど。

 植野さんとか川井さんとかも最初から敵意や悪気があったわけでもなくて、硝子のことを気に掛けたりアシストしてあげたりしているわけで。

 島田はちょっとわからんが。わからんけど多分に将也目線なところもあるからなあ。

 そして硝子は転校していってしまって、離ればなれになったまま将也は高校生になる。そこからまた硝子と再開して、話をして、時間が動き出していく感じはすごく青春でもある。

派手さがないだけに際立つ演出

 全体の雰囲気的には、基本的に結構あっさりというかしっとりというか、地味めかつ丁寧に描かれているように思うのですが、だから逆に派手な演出が入るとすごく印象に残ってくる。

 そういうところは当然そんなに多くない、数えるほどのものだけど、それだけに強い感じを受けます。

 それも、そこだけじゃなくて全体的に丁寧に作られているから…というのがもちろんあって、どれだけの手間がって考えるともうこれすごいですな…

 作品のテーマ上、ところどころに手話が入るのですけど。その動きも自然で、かつ特に補足が(字幕とかで)入るわけでもないのだけど雰囲気は伝わってくるという。

 手話が分かるとまた違った見方になるんでしょうね…

 硝子は作品の中で「意図を伝えること、受け取ること」に明確なハンデのある子で、それを読み取ってやれないもどかしたみたいなものも一緒に感じます。発音とかもね。でもあの足ぱたぱたしてるの超かわいいからそれは伝わった。

キャラクターたちの関係性で作られる物語

 私が普段に好んでいるのは、結構「目的」がはっきりしたストーリーが多いです。廃校の危機を救うとかそういう。

 本作はそういう意味では作品内の「目的」というものがはっきりとしてないように思えて、ただ関わってくる人が増えるとそれに付随してドラマが生まれるという、ある意味この世界の日常的な物語の広がり方をしているような気もします。

 「これを目指したい」というはっきりとした意志ではなくて、「こうなったらいいな」みたいなふわっとしたところが少しだけ行動を変えて、それがまた人を引き寄せていくような。

 それで最初に高校で引き寄せた永束くん。この作品、彼に救われてるところあると思う…

 将也の性格や、こじれてる物語やなんやでともすればひどく暗くなりそうになる話だと思うんですがそこで登場するのがあのモコモコ頭

 あいつほんと良い奴やで…

 また、大人は結構さばさばと、子どもらは結構めんどくさい感じで書かれているような気もします。中心は将也ら子ども達の話なので、あんまり出てこないからそう感じるのかもしれないけど。

 植野さんとかだいぶこじらせ系でかわいいんだけどこじらせ系だよなあ。つまり猫だ。

 川井さんもだいぶなんというかなんというかなふうに捉えてたところあるんだけど(悪い方向に)ピュアだというのが舞台挨拶で「川井さんはシスター」というのでよくわかった気がした。確かに素直っちゃ素直。

 素直さ加減でいうと、結絃の懐くか懐かないかみたいなところはまた大変いいですね。

 人が増えて、エピソードという思い出も増えて、それが丁寧に折り重なっていくようなところがあるから、派手なアクションとかはないですがしっとりと引き込まれて時間が過ぎていきます。

 そして後で思い出してまた泣く。

 やっぱりその関係性の中で、将也の気持ちがだんだん変わっていくところとか。花火大会の夜の硝子の行動に繋がったものとか。

 将也もそうだったところがあるけど、全部抱え込んでしまいたくなる絶望感という、ある意味青春のそれがな…

 でもそういうところも含めて青春で、やっぱりなんか、等身大の優しさがあるな…と思いました。

 恋愛もの、というカテゴライズとは違う気がする、もしかしたら純文学的なそれというものなのかもしれないです。

 胸を打つ作品が好きな人にはお勧めしたい映画です。

公式サイト

koenokatachi-movie.com

映画情報

eiga.com

原作など

 原作コミックス。全7巻。映画の時間に納めるためにだいぶ省略されたり再編されたエピソードがあります。

 つまり原作はさらに闇が深い。

 しかしそのぶん、それぞれの登場人物たちが掘り下げられています。真柴とか島田とか、映画だとほんとあまり出番なかったのが残念なところ。佐原さんと植野さんについても尺的に難しかったし。

 だから映画を好きになった人は是非読んでみて欲しいです。

 ファンブックは読み切り版と著者インタビュー収録。

youtu.be

主題歌「恋をしたのは」 またこれが刺さる…!

恋をしたのは(初回限定仕様盤)

恋をしたのは(初回限定仕様盤)

映画 聲の形 オリジナル・サウンドトラック a shape of light[形態A]

映画 聲の形 オリジナル・サウンドトラック a shape of light[形態A]

「ものの歩」5巻感想 未来に向かって続いていく最終巻

ものの歩 5 (ジャンプコミックス)

 全然これからだったのに終わってしまったあ…

王の名をもつ少年

 ついに奨励会試験を受けるため、会場に向かう信歩。

 会場までわずかな距離…なのに、なんかいろいろとトラブルに巻き込まれたりして、そこでまた浮き世離れした強さと雰囲気をもつ少年、斑木王四郎に出会います。

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(「ものの歩」5巻より)

 クール…ではなくて完全に天然、なればこそ嫌味もなく当然のように相手を踏みつぶしていくその強さ…

 また会場で一次試験を受けようというのは小学生ばかりで、信歩は自分の立ち位置の特殊さに改めて気づかされたりもします。

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(「ものの歩」5巻より)

 でも棋歴数ヶ月でここに来るっていうのはやっぱり才能、いや「向いてた」といったほうがぴったりくるのかな…

 しかしこの会場での運命的な演出も、またぐっときますね。王四郎の浮き世離れしたところも生きてて。

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(「ものの歩」5巻より)

かやね荘の主の戦い

 そして今巻は後半にかけて、かやね荘の主、泰金さんのプロ昇格を賭けた戦いでもある。

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(「ものの歩」5巻より)

 いまひとつぱっとしない、すっかり管理人さんに収まってしまっている金ちゃん…でもですね、そのもやもやとした気持ちを打ち破っていけるか。

 信歩がここに来たことも半ば偶然ではなく、そのある意味「定石を外れた一手」だったものがここまでの道のり、結末を変えていったのかなと思うとまた熱いというかもう最後完全に主役。



 そして二年後、二年後に続いてしまう…

 ああー あとがきにも「奨励会編が本番だった!」みたいなことが書いてあってほんとああー

 二年後のエピローグはみんな成長してたりかやね荘に新しく加わるかもしれない? メンバーだったりでなんのかんのと続いていく感じがとてもよい最終回でもあるんですが、やはり惜しい。

 結局、信歩が本格的にプロを目指す! というところまでとなってしまったのがほんと惜しい…

高まるみなとお姉ちゃん

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 ブレない…

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 でも一番心配してるお姉ちゃん。

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 みなとさんが順調にぽんこつ化していってるのほんとすき。

 そして二年後エピローグとなってしまって二年分の進展をすっとばしてしまった結果になってしまったうえおまけマンガがラストエピソードな勢いなので連載分しか読んでない方はマストバイですよこれは。あ"あ"~

 信歩はもしかしたら天然ジゴロなのかもわからんな…あと十歩くんもヒロイン。Wヒロインかこれ。





 しかしやっぱり、信歩がプロを目指すスタート地点に立つまでで終わってしまって、みなとさんや桂司、香月、銀雅さんらかやね荘のメンバーの対局やクローズアップしたエピソードまでは無かったのがほんと残念ですね…

 他のメンバーの活躍も結構楽しみにしていた自分がいます。

 地道だけど熱い、少年漫画的将棋ストーリーでした。逆に考えれば5巻と手頃な巻数でもあるので、もし気になりましたら是非、お手に取ってみて下さい。

今だと、1巻は期間限定無料みたいなので是非! (9/20まで)

 そして唯一心残りなのが…どこかに掲載されてた、文化祭のメイド喫茶が未収録だったことですね…みなとおねえちゃん回だったから…