今巻は結構、宿命を感じさせたり急接近(どころではない)しちゃったりしてるなあと思っていたら、いい最終回を迎えてしまった…
命を繋いでいく薬師の旅
ファンタジーな生き物がありふれている世界で、その世界にあるエイル教の教義に従い「害獣」(ファンタジーな生き物は総じてこう呼ばれています)を退治したり異端者を捉えたりする「角守」という職の少年アッシュと、その害獣を治療して回る異端者のフィジかわいい薬師フィジカのファンタジー動物記第二巻。にして最終巻。
今巻はアッシュの父親、フィジカの契約や家族の話、迷いなどキャラクターにクローズアップしているところが多く、それぞれの人物のエピソード、フィジカたちのその後に繋がるような話がメインかなと思います。
人狼ゲームをモチーフにしているエピソードも結構変わり種だったし。エイル教の聖人にまつわる話なんかもありましたしね。
それによって動物記っぽさが薄まっているところはありますが、読んでて「なるほどなあ」というケルピーやワイバーンのお話がささっと入ってくるから安心です。カーバンクルは結構まさかのカーバンクル。俺ただの魔法跳ね返す小動物としか見てなかったから…でも(正体については)そういう説もちゃんとあるみたい。
しかしみんな(人間の尺度で測ると)長寿過ぎてなんていうかファンタジー…むしろ逆に人間が短命なのがおかしいみたいな感じになるところまである。
急速成長した妹の登場!
故郷の妹扱いだったロッテがいろいろとひっさげてダイナマイトに参戦!
…いや、ほんとにいろいろと予想外な感じですね。完全に兄より優れた妹ですし。でもKAWAIIから正義。温泉はなお正義。
そして妹参戦によってアッシュの鈍感さがますます目立ってきていてほんとこれ。
まあ…妹キャラはえてして家族なわけでもありますけどね…というか家族だしね…
この「家族」というのも実は結構隠れたテーマなのかな。種を繋ぐということはつまりそういうこと。
紡がれていく未来
そして迎えるエンディング…いい最終回でした…
アッシュは最後までアッシュだったけど。らしいっちゃそう。アッシュ…
しかし、ここまでの旅路にはいろいろあったのだろうけれど、それが語られなかったのは残念でもあります。
ありますけど…なんか人間の時間感覚だと巻数がいくらあっても足りないようなストーリー量になってそうな気もしてなかなかえらいことになるかもしれない。
エイル教という教え(と利権)によって人間が他の種族を(結果的に)迫害している世界で、「人間も世界にいる一つの種族、でもその人間から見た世界」というちょっと違ったファンタジー観を感じていたのは、もしかしたらこの時間感覚、種族による寿命、老化速度の違いがあるのかもしれないです。
フィジカからしてもう完全にかわいいんだけど、齢100歳を越えてるみたいだからなあ…エルフ族ほんとすき…
でもアッシュがフィジカの尻に敷かれてるのはまあきっと変わらないので、なんていうか、きっと世界は続いていく。