つんどくダイアリー

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わりと好き勝手書いてるからネタバレてたらごめんね。旧「怒濤の詰ん読解消日記」。積まれてしまったマンガ、ラノベなどを読んで感想を書いています。結果として面白い本の紹介だったりまとめだったりになってる。/端末の表示によると、あと740冊/※本サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。ページ内のリンクがアフィリエイトリンクの場合があります。

まさかの内科医 in 異世界「おことばですが、魔法医さま。~異世界の医療は問題が多すぎて、メスを入れざるを得ませんでした」サブタイ長い【ラノベ感想】

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おことばですが、魔法医さま。 ~異世界の医療は問題が多すぎて、メスを入れざるを得ませんでした~ (電撃文庫)

 内科医が活躍する、と聞くと昔みかけた出所不明のコピペを思い出します。

天才内科医ブラックジャック

「むぅ・・・これは多発限局性運動性末梢神経炎、いわゆるルイス・サムナー症候群! ・・・ お薬出しときましょう

「こ、これは・・・球脊髄性筋萎縮症、ケネディアルターサング病か!・・・お薬出しときますね

 お薬出すしかないのではないか…

 しかし本作は、そういう僕の予想を見事に裏切ってくれました。そして金髪ぺたん娘は裏切りませんでした。良い。

いきなりファンタジー異世界に飛ばされたらば

 大学からの帰り道にすっころんだら異世界という俺が今まで見てきた中でもトップクラスに雑な異世界転移を果たした医学生、伊坂練次郎。まあもう別にどうやって異世界に行くかっていうのはもういいでしょって感じが素敵です。(この世界では結構カジュアルに異世界からの召喚が行われてるっぽくて、まあ普通に巻き込まれた感じのライトさなり)

 まあそれで、大怪鳥の被害を受けた村に残って治療に努める金髪ぺたん娘…もとい魔法医コーディのテントに転がり込む形で異世界召喚デビューした彼が、元の世界に戻るために王都に向かう傍ら、コーディの手伝いをしつつその医療知識で人々を救っていくハートフルな連作短編です。

 伊坂は医学生としては優秀なほうであり、その知識も技術もかなりのもので、患者の症状も対処も的確にしていくのですが……そもそも薬がなかった。

 
 あー。異世界。あー。

 そうか…お薬出しときますねできないんだ…

 さらにこの世界、「回復魔法」が唯一の医学という偏った発展を遂げており、内科の医療技術はむしろ邪道をみなされているところすらある始末。はたして伊坂Hこの先生きのこることができるか…

ないならつくってしまえの精神で

 しかしめげない伊坂選手。その知識をもって、風邪には大根おろしとショウガを出してみたり、異世界物質でパッチテスト(皮膚に貼ってアレルギー反応を見るシール)をやってみたり、狭心症のためにニトログリセリンを調合してみたり。

 
 
 うん最後、おなじみのようで物騒な薬物混ざってましたね。

 実はこの世界にも錬金術、まだ化学と呼ばれる前のもののような技術はあり(そして錬金術がやらかしたからこんなに魔法医療偏重になったともいえる)、治療に必要な薬はそっちのほうから調達することができるかもしれないという可能性があったりしたわけで。

 このあたりで、読んでいるこっちはそうか体調不良、内科というのは化学反応方面なんだ…ということに気づきました。いろいろな症状を抑えるお薬ってそういうことですものね。

 症状から見る専門的内科医の診断、「どうしてそうなるのか」「どう解決するのか」という謎解きのような要素だけでも面白いのですが、そこに「どうやってそれを調達するのか」という錬金術的な手法の楽しさ、またさらにこの世界独自の要素である「魔法」が絡んできて、いろいろな切り口の要素が組み合わさって大変楽しい。

 回復魔法についてはおまけ程度の扱いかな(基本的には外傷に効果を発揮するもので、内科中心の物語だとどうしても地味に)って感じではあったのですが、ラストのほうなどはこの力と現代医療で発展してきた化学の知識が組み合わさるのは、やはり新しいステージが開けるのだろう…というところも思えて良いですね。現代に足りないのは魔法ってこと。

患者さんとの交流で綴るハートフルヒューマン医療コメディ

 そして医療ものとしては欠かせないヒューマンドラマ。

 …といってもそう深刻なことにはならず、事情を抱えた患者さんの症状、悩みを解決していくパートです。

 いや、最後は結構おおごとになりますか。なりますね。

 ともかくこの現代医療(知識)と(回復)魔法の名手のコンビは、助けを求める患者さんの問題をその能力でばしばしと解決していき、それによって生まれるドラマがまたほっこり。踊り子さんの話とか好きですよ。いえ別に女の子率が高いからというわけではありませんが。それはそれとしてどうしてカスミさんやヒータさんの挿絵がない。解せぬ。

 
 
 
 まだ医学生ではあるけど医療従事者として患者さんの助けになろうとする伊坂、年若くても魔法医としての道を進んでいくコーディ、反目しながらも(というよりコーディが一方的にぐぬぬしてるだけですが。かわいい。)目指すところは一緒という二人の化学反応が異世界の医療をどう変えていくのでしょうか。

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