VR装置が暴走して人の脳内願望を元に異世界が作られ、それを冒険者が攻略していくという現代ファンタジー。
VR…と聞くと仮想のアレかって思いますけど、実際は仮想ゲームではなく異世界攻略(だと睨んでる)
VR装置「Mig」の暴走から始まった東京ダンジョン
作中時間で5年前、家庭用端末として普及した「Mig」の暴走により東京…いや日本中のマンションが異界化。
その異界、ダンジョンを作り、それに取り込まれた創造主を救うための政府機関として「ギルド」が組織され、ダンジョンに挑む冒険者達をバックアップするーーという、非日常冒険ものです。
苦学生の赤峰はダンジョン攻略の報酬を得るために冒険者となって、同時期に志願した蒼倉、桜白、緑の三人とパーティを組んで、勇気と連携で危機を乗り越えて成長していく。
仲間の三人にもそれぞれ事情があって、ともすれば赤峰のそれが一番軽い(といっても十分に大変だけど)という主人公としては「普通」な位置づけですけど、普通だからこそ、という面もあって良かったのかなと思います。
全体的にRPGゲーム調の雰囲気があるので、主人公色は薄くなってるのかもしれません。
(しかしこういう流れで行方知れずの父親は後々ヤバいキーパーソンであることが発覚するパターンもまた定石なので油断はならない)
本巻はまだゲーム最初というかチュートリアル的な雰囲気もあって、いろいろとこれから感はあります。仲間との連携や協力、それぞれの事情に突っ込んだ話などについてもまだまだで、目の前のことに手一杯という感じでもある。
ダンジョンやMig、という構成要素にも謎が多いし、表に認識されているもの以上の何かがありそうです。
ダンジョンを発生させる「Mig」とは
すべての元凶となっている、精神干渉派発生装置「Mig」。
あらすじにも「最新のVR技術」とあるのですが、読んだ限りではどうも違う印象を受けました。
Migの本来の使い方としては、精神干渉波を送信するというもの(イメージを直接脳内に描写するということなのかな)でしたが、その暴走によって使用者の脳内イメージを元にしたダンジョンが作成されてしまった。ダンジョンはMigの使用者=創造主と呼ばれる人物の抱いているイメージが反映された風景、敵、ギミックが出現したりする。寝ているときに見る夢のようなものに近いかもしれないですね…
冒険者はそのダンジョンに潜って創造主を救助、Migの電源をオフにしてダンジョン化を解除するのが大きな目的となります。しかしそのダンジョン内で負った怪我はそのまま現実のものとなったり、またダンジョン内で獲得したアイテムも現実に持ち帰ることができてしまいます。
またダンジョンを生み出した創造主は、ダンジョン化が始まった5年前からそこに閉じ込められていてもダンジョンの「核」として生きていて、ただのVRではない…ということは容易に想像が付きます。
しかし創造主の脳内のイメージがもとになったダンジョンだったり、冒険者もイメージを具現化して戦うことができるなど、ダンジョンというものが現実離れした空間であることもまた事実。一体この空間は何なのか…
それはそれとして、目の前に存在しているダンジョンがイメージを具現化して探索するというゲーム好き的には夢の空間であることもまた事実。
戦う武器や必殺技を得るためにはイメージ力が必要であり、具体的なイメージをつかむためにゲームを真面目に研究するみたいなわりかしシュールな光景もあったりしますが、技名叫んで技が出るのは夢といっていいですよね。おっさんは年齢制限によりダンジョンには入れませんが。詰みか。
現実世界も巻き込んで、ダンジョンを攻略せよ!
そしてこの作品のポイントとして、ダンジョンはそれまで普通に暮らしていた人の脳内イメージから形作られているというところですね。異世界で完結していない。
攻略の糸口も「なぜ」「どういう人物が」「どういうタイミングで」ダンジョンを作ってしまったのか、というところにあったりするので、現実と絡めて解いていく場合も出てくる。
まあいいから寝かせろみたいな大変よく分かる…いや、特別ヘビーでない普通な感情が多くのダンジョンを形作っているようには思われますが。そういう面でも、普通の人が巻き込まれてしまった災害、という感じがあるかもしれません。
オタクがMig使ってたら大惨事だったな…いろんな意味で…いや東京の、日本のどこかには発生しているだろう地獄のオタクダンジョン。Migみたいなガジェットは誰に言われなくても買いそうだし…
自分が寝てる間にドリームダンジョンをよってたかって攻略されるというほうにむしろ恐怖を抱きながら地獄のオタクダンジョンは登場しなくてよかったとおもいました。見てみたい気もするが絶対地獄という確信はある。