ガンダム作品には珍しい、「AI制御の無人機」として制作されたガンダムの物語。
無人機であるから完全に兵器であり、「ガンダムのパイロット」は終始無言なのだけれど、その行動に不思議な人間らしさを感じるところがあるのがまた。
「ゼファー・ファントム」の開発
物語は宇宙世紀0067年、まだMSすら出来ていなかった時代から始まる。
人型ロボットシステムの開発をしていたカインズ博士とリッツマン博士。その試験の成功と失敗。コロニー自治体のキナくさい動き。そして迎える0079年。
カインズ博士は連邦の技術者として、無人機「ゼファー」の開発に携わっていた。急襲するジオン軍をゼファーで迎え撃ち、そのまま一年戦争をゼファーとともに駆け抜けていく。
「無人機のガンダム」というのはほんとに珍しくて、しかもそれが一年戦争時にきちんと自律して動いているというのは類を見ない。ガンダムの学習機能はパイロットあってのことだし。SガンダムのALICEはいずれそこまで行くかもしれないけど。
ゼファーも学習型AIのようで、エリシアが教育担当としてプログラミングをしていっているという説明はありますが、起動即実戦みたいな勢いでもあるし。完全無人が前提とされていて、ALICEの完成形がもしかしたら既にここにあったのかもしれない。
完全無人のMSだと、ガンダムWのMDシステムとかを思い出します。ただ、あれらは基本的にやられやくであって、話のメインにはなっていないですよね。
無人機が主役機、ガチでパイロットが居ないというところまでいくのはゼファーくらいなものではないかと。
(ガンダムシリーズは外伝とか多すぎるので他にあったらごめんなさい…という予防線は張っておきます)
そうして起動したゼファーは、無人機ならではの強さを見せつけながら戦場を転々としていきます。
そしてエリシアが…人が教えて、AIが学習していった成果なのか…最後の決戦でのあの動き、判断。そしてラスト。
最初、生みの親のカインズ博士すら「ファントムは奴らを蹴散らすためのものだろうが!」と叫んでいたこの機体。最後エリシアが見送るところは、ゼファーの起動から読んでいっている読者としても機械としての愛着のような「ゼファー」に対するもののような、不思議な気持ちになります。こういう閉じ方ほんと好きです。
あと、RX-78を乗せたホワイトベースとすれ違うところもなんていうか感慨深いところがある。
相対するジオンのステルス機
その連邦の無人機に相対するは、ジオンが開発したステルス機「カタール」と、そのパイロットでニュータイプのエファ准尉。グラナダの実験場から救われた…拾い上げられた15歳の女の子。その境遇と気の強さ、それを引き受けるアド艦長の粗暴な親父力。ジオンだ…ジオン軍人は親父力高い。
ゼファーを落とすために出撃して死闘を演じるエファ。相手が無口すぎるので独り言の多い子みたいになっているのがかわいい(何
(そもMS戦は独り言と独り言の応酬みたいなものといわれたらそうですが)
彼女は最後までゼファーが無人機だとは気づいていなかったけれど、無人機だと分かったらどう思ったんだろう。
「無人機と命がけで相対する」だけではない、何か違ったものがあるんだろうかと。
このステルス機に最初に反応したのはゼファーというのもなかなかアツいものがあります。
GMの起動実験
閑話的に差し込まれている、無人機のシステムを搭載したGMの起動実験の話。
東京で行われたそれで無人機が暴走するという、ある意味お約束の展開なんですが、この話も結構好きで。明確に日本が舞台なのも親近感あるところなのかもですけど。
ジオンと連邦の心意気みたいなところがあるのが気に入っているところでしょうか。
戦争といっても、多くの人は無条件に憎み合っているわけではないのですよね。
コミックスは相変わらず古いものしか…再版されたものも2002年とは。
「Gの影忍」が突如電子化される時代の流れなので可能性信じてます。
(2017/02/15追記)
アウターガンダム電子版が発売されていたのでリンクを更新!! やったぜ!!