凄腕の医師…そして高額な報酬…黒い…
だがKAWAII。つまり正義だ。
モンスターのお医者さん
エイル教会に所属し、人に害をなす「害獣」(いわゆるモンスター)を退治したり異端者を捕まえたりするのが仕事である「角守」の少年アッシュと、その害獣を治療して回っているため、教会から異端認定されている凄腕薬師フィジカ。
そんな二人が道中で見つけた害獣を治療したりしながら短編連作的に旅が進んでいきます。
フィジカは「薬師」となっているけれども、要はモンスター相手の獣医みたいな感じで、さらに薬と「手当て」という弱い回復魔法程度しかないこの世界で外科手術をこなす医師でもある。
その治療に伴って出てくる、謎のモンスター雑学とか生態うんちくとかもまた興味深いところ。バジリスクがコカトリスに進化したとか。石化するといわれている視線の理由とか。
ファンタジー分類では魔物、モンスター、敵というところに違いないんだけど、ある意味ちょっと変わった動物だなあみたいに思えてくるから不思議なものです。動物のかわいさいっぱい。いちばんかわいいのアースドラゴンの可能性まである。
かわいいといえば容姿だけでいうと人魚や妖精と呼ばれる亜人で、それらもエイル教的には「害獣」としてまとめて討伐対象にされてしまってる。
人魚の話は他の話と毛色がちょっと違ってせつなく怖いところもある感じ。だがそれがいい。そういうのがさりげなく混ざっているのもいい。
ファンタジー的生態系環境とエイル教とお人好し
そうすると出てくるのが、それら害獣込みで回っているファンタジー生態系。
フィジカはそれらのことまで考えて治療したりとかをしているわけで。それをガン無視して「害獣は悪」という教えを広めるエイル教は敵視して然るべき存在ですね。
そのエイル教の信徒であり「角守」であるアッシュがどうして一緒にいることができているのかというのもあるけど、アッシュのお人好しポイントが高すぎるとしか言い様がない。
そしてそれによって、違った側面から世界を見ることになるわけで…もともと「異端者」や「害獣」に憎しみを抱えていなかったアッシュだからかもしれないけれど、エイル教の教えにこだわりつつも状況に流されて結局フィジカの手伝いみたいになっているのほほえましいけど大丈夫かそれ。
おっさんみたいなおっさんになるとな…それ巻が進むと異端認定される未来しかみえへんのや…あんまりそう殺伐とした世界観じゃないからきっと大丈夫だと信じたいけどな…
KAWAII
だがフィジカは正義である。
治療の代金に大金ふっかけてきたりあっさり見捨てようとしてみたりしても結局アッシュを助けてしまったりしているしうざったがってもつかづ離れず。この距離感。これ。
アッシュのお兄ちゃん気質と相まって生意気だが離れられない妹ポジを確立しつつある。いいぞ、いいぞ。
町での買い物とか豪華な宿屋に泊まってたと思ったら駆け込んでくるところとか見所いっぱいですね!
いずれ故郷の義妹とVSすることになるのだろうか…いろんな意味で先が楽しみな一冊です。