表紙の美少女神官に気を取られて雑魚モンスターを叩いて回るようなゆるーいファンタジーだと思ってたら地獄のような一冊でしたよー?
ゴブリンという魔物
古き良きRPGをはじめとしたファンタジー的世界観のゲーム、マンガ、アニメなんかではだいたい雑魚モンスターとして扱われるゴブリン。
初級冒険者の経験値稼ぎモンスター。徒党を組み人や家畜を襲い村娘を拐かす。だいたいそういうイメージがあります。本作品でもだいたいあってます。
最初のお話でも、剣士、武闘家、魔法使い、神官というRPG的にオーソドックスなパーティで、家畜を襲い村娘を攫ったゴブリンの巣に乗り込みます。
初心者パーティといえどもゴブリン数匹ならものの数ではない戦力。
それが十数匹の群れに襲われたら。
狭い洞窟内でバックアタックを食らったら。
一人づつ袋だたきに遭ったら。
初手からこれが雑魚モンスターでは無く小さい鬼であることをたたき込んでくれます。
この救いのなさ…攫われた娘がどういう扱いを受けるかなんて平和なファンタジーでは出てこないようなところまで含めてこの救いのなさ…
また恐ろしいのがこれが辺境のいたるところにポップしており、村から討伐依頼が出ているのも日常茶飯事ということ。
確かに雑魚モンスターはめっさ沸いてるけど…けど…
ファンタジー世界的な過酷な現実というものがここにある。
ゴブリン殺し
そして主人公はその小鬼どもを殺して回るゴブリン殺し。
本当に淡々と殺して回る。
こう、派手な必殺技とか一騎駆けとかドラマティックな物語とかがあるふうではなく、淡々とカウントしつつ殺して回る。
ゴブリンは殺す。必ず殺す。
ただ、無口ではありゴブリンに容赦はないけど人でなしというわけではなく。新米冒険者の女神官や、幼なじみの牛飼娘などを気に掛けていたり、パーティを組んでの行動に少しばかりの楽しさを見いだしたりもしてます。
ゴブリン退治の依頼ばかり受けるギルドの名物男みたいな扱いになっているのも、とっつきにくいが外道ではないからでしょうか。ゴブリンに容赦はないけど。
でもその心の闇は深く、ゴブリンを殺して回ることでさらに育っていくようなふうにも。
その戦いに終わりがあるのか
劇中で、「なぜゴブリンは襲ってくるのか」という問いに、「自分の住処が怪物に焼かれたと想像してみろ。そいつらを殺して回るだろう。殺して殺して殺していくうちに、楽しくなってくるんだ」とゴブリンを殺して回っている男が答える場面があり。
ゴブリンからすれば人間側は、獲物であり復讐の相手でもあるという認識もまた示されているわけで、これもう完全に血で血を洗う復讐のループですわね…
共存できるような相手ではないので、どちらかが滅ぶまで続く戦いになるだろう。
ある意味魔王とかそういうのより厄介である。
しかし、人間VSゴブリンの決着という枠では無く、ゴブリンスレイヤーがゴブリン殺しから普通の冒険者になる、という形でこの物語は終わるかもしれないなあというのはちょっと思うところがありました。
そんな平和なエンドにたどり着くことが出来るのか…
それにしてもこんだけ新米冒険者の命に関わるクエストならもっとガチで止めないとヤバいんじゃないのギルドもって思うんだけどそれもまた過酷なファンタジー世界の現実なのか…