怒濤の詰ん読解消日記

つんどくダイアリー

旧「怒濤の詰ん読解消日記」。積まれてしまったマンガ、ラノベなどを読んで感想を書いています。結果として面白い本の紹介だったりまとめだったりになってる。/端末の表示によると、あと740冊

「バビロン2 -死-」感想 絶望しか見えない…

バビロン 2 ―死― (講談社タイガ)

 最後まで読んだら「おお…おお…」って嘆きの声しか出ない…

 

生きるという権利

 様々な社会システムの実験特区として用意された「新域」において、その域長となった齋開花。その彼が、「新域」の仕組みを利用して「自殺法」を制定するという暴挙に出る。正崎たちはその暴走を止めるべく手を尽くしていくのが今巻の主な展開ーーではあるのだけど。

 

 なんとか齋を確保、有罪に「するために」奮闘しているそれは、逆説的に「自殺法は悪いことなのか?」ということをあぶり出すようなものになっていってしまっているところが、なんともいえない気持ちになっていく。

 個人的な常識としても、「自殺」は悪いこと、やってはいけないこと、それを推し進めるというのはモラルに反するというのはもちろんありますが、齋が提示しているのは「自殺という選択肢、生きるという権利を放棄する行為を認める」ということなのですよね。

 概念的には安楽死、尊厳死の一歩先、という位置づけになっています。

 

 そう問われると…僕個人がそれを行使するかはさておき、選択肢としてあることは別にいいんじゃなかな…という気持ちにもなるのですよね。

 システムとしての、話だけをするなら。

「曲世愛」という女

 そしてもう一人のキーパーソン、曲世愛。

 地検特捜部検事の正崎と、検察事務官として新しく配属された瀬黒陽麻は、齋と動じに曲世も追っていくことになります。

 

 齋については新域で好き勝手されていることを止めるため、なんとか罪に問えないか、場所を特定し確保できないかという詰め方をしていっているのですが、曲世についてはなんというか…そもそもなんともいえない。

 正崎はこの女を野放しにはできないと考えてはいるけれども、それを主題に上げるまでの説明ができるわけでもなく。

 「関わった男を虜にして、死に追いやる女」なんてオカルトでしかないですからね…

 

 それでも捜査の隅で情報をあつめつつ追っていくわけですが、やはり得体の知れない不気味さだけが残っていくような感触でしかなく。

そして

 「システム」としてだけなら、まあ…「自殺法」も納得できるんじゃないのというようには思いました。

 けれどそこにこのオカルト成分が加わると…恐ろしいほどおぞましいものに変わっていく…

 

 嘘をつくときには99%の真実の中にといいますが、ラストまで正崎たちはずっと「現実的な」常識の中で齋を追い詰めるために奮闘していたのですよね。たとえ非合法な手段があったとしても、それは「非合法」であって「常識の埒外」ではないわけですよ。

 「警察大変だなあ」とか「黒瀬さんだんだんデレてきてるのかなぁ」とかいう小波感ある感想から、「他に手は…いや法解釈的には」みたいなネット軍師的な楽しみ方まであるのもそれが常識の中でのことであって。

 

 だからこそ、曲世という女のおぞましさに圧倒される。もう最後のほう「ア"…ア"…ア"…」って声しかでない…

 それまで構築していた99%常識的なサスペンスに投げ込まれた1%のオカルト。冷静に考えるとあり得ないことなんだけど、一手でリバーシの白が黒にあらかたひっくり返されるような、絶望に染まるこの感覚。

 

 1巻でもその片鱗見せていたけど…容赦ない…容赦ないで…