すごく面白いホラー小説。面白すぎて最後のほうはむしろ笑えてきた。
完全に何かが吹っ切れている感あるしやっぱり人類死滅しそう。
同名映画の小説版、という立ち位置ですがノベライズとかサイドストーリーとかいうものではなく登場人物もストーリーも一新されているのがまたポイント高いです。
化け物
表紙は映画のポスターのようなのですが映画とは全く違ったストーリーで「呪いのビデオ」VS「呑む家」のキャットファイトがお送りされます。
女優志望の恵子とオカルトジャーナリストの小堺が「呪いのビデオ」と「呑む家」の両方の強力な呪いに関わってしまい、それから逃れるためにいつもの発想
化け物には化け物をぶつけるんだよ!
そしてその発想が現出する地獄への入り口となる。
呪い
この本には軸となる「呪い」が二つ出てきます。
一つは「呪いのビデオ」。そのビデオを見ると「貞子」という幽霊から電話が掛かってきて、二日後に死ぬというもの。
もう一つは「呑む家」。街の中にある廃屋で、その中に入ったものは消えてしまう。その街では行方不明者が後を絶たない。
この二つの呪いは、それぞれ別の作品のもので、「呪いのビデオ」は「リング」、「呑む家」は「呪怨」というホラー作品で主体となっているものです。
「リング」は呪いのビデオを見てしまった主人公がその呪いを解くために、貞子の過去に迫っていく話。ホラーなのですがミステリアスなストーリーでもあります。
「呪怨」はそれとしらず中古住宅に引っ越してきた一家が、伽椰子と俊雄にいろいろされちゃう話。こっちはガチホラー。
両方とも、今作品内では「都市伝説」のものとされていて、完全に呪いの舞台装置として動いています。貞子や伽椰子のバックグラウンドについては全く語られないので、逆に両方の元になる作品を知っているとより楽しめると思います。
といったように、どちらも主役級の呪いなのですけれど、それが平行して登場人物たちに襲いかかってくるというどちらの呪いも楽しめるストーリーにちゃんとなっていて絶望しかなかった。
このそれぞれの呪いについて煽られた恐怖がですね、「呪いには呪いを、化け物には化け物だ」というあの発想にそれで助かるとは到底思えないけどどうなるか見てみたいという妙な説得力と期待感を与えると言いますか。
完全に好奇心に殺されるパターン。
貞子VS伽椰子
「呪怨」では、章の頭で登場人物の名前だけが浮かび上がり、それがじんわりした恐怖を与えてきました。本作でもそれをリスペクトしてサブタイトルには体言止めが用いられ静かに恐怖を煽っているのですがラストのサブタイほんと秀逸だと思います。
ホラーとギャグは隣り合わせみたいに思うところあるんですがこれ最後のほう絶対作者ノリノリであろう。「呪いのビデオ」と「呑む家」の話だったのがもう完全にカオス。
「うわー うわー」みたいな顔しかできなかった。
「貞子VS伽椰子」というコンセプトだけは共通しているのですが、この話は映画とは全く関係が無くて登場人物も一新されています。女優の卵の恵子とオカルトライターの小堺。その小堺の人脈を使い貞子VS伽椰子を撮影して売ろう! という正気の発想ではないものが追加されて、恵子と小堺だけでなく撮影に集まったスタッフたちも伽椰子と俊雄のびっくりハウスにご招待。
映画ではなんだかんだいってプロの霊能力者が被害を拡大しないように、ちゃんと助かるように気を配っていたのですがこちとら怖い物なしの素人の集団が「呑む家」に乗り込んでいるわけですからもっとひどいことになる。たぶん絵的にこっちのほうがひどい。
なので、ホラーとしてのつよさは小説版のほうがつよいかもしれない。
でもなんか一周回ってしまって光景は地獄なんだけどもうなんかコメディーみたいで完全に感覚おかしくなっちゃってる感じあります。「ハハッ! しんだ!」みたいな。
映画のノベライズというわけでもないので、映画を見たひとはこちらも読んで、こちらを読んだら映画のほうも見てみるとより楽しめると思いますので是非。
登場人物など全然違うんですけど、展開の流れを思い返すと共通しているようなところもあったりしてそのあたりを比べてみるのも面白いです。
あと百合百合しくはなかった。むしろガチのファイトだった。トッシーはちゃんとママのこと応援してあげなよ。